桜花特攻隊員最期の八ヶ月_15〜昭和二十年五月 | 大東亜戦争ダークツーリズム~星になった彼等を想い声なき声を伝えたい

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亡くなった者は語る事ができない。ならば生きている者が亡き者の思いを代弁するしかない、その思いで戦争遺跡の周知及び戦争被害者の心に寄り添っていこうと思っております。組織や団体は大嫌いな一匹オオカミです。

五月十二日(土)晴れ
今日も出撃して征く戦友特攻機を熱い涙で見送る自分は曽て先月二十日の出撃に飛行長の杯を拝したのにあの如して皆帽子を振って送って貰ったのに不覚や再び富高基地に帰るの皮肉な運命に誘われたのだ。

しかしこれについて自分は持たない総てが天命だ用不はその天命には従順に服す。

初夏の午後山野の徘徊悪くない海岸を山をそして野原を自由自在に自分勝手に気ままに行動これは我々にとっての一番楽しい愉快さでなくて何であろう。

のんびりとして自分はこの一時をもって十年も二十年も長生きした様な思いである。

五月十五日(火)雨
国の為捧げし生命は惜しまねど七度生まれて夷敵砕かん。

五月十八日(金)晴れ
今朝総員起し四時我波と跳ね起き指揮所に走りて勇躍進出して征く僚機を見送った。
次々と離陸して征く機の中に一機爆音不調なのを直覚すも彼機はもう地上を離れていった無意識の中に握っていた手には何時か熱いものがにじみ出ていた無事を祈りつつ一心に見送る。

やがてその機は第二旋回を始めたが次第に機首を下げ高度はだんだんと下がり始めた「ああいけない不時着か」自分は直ぐそれと思う間もなく遥か田園の彼方に突っ込んだ。

思わずああと叫んだ同時に自動車に向かって走った。

どうぞ怪我無きようにと一心に神に祈って行って見ればその搭乗員は同年兵の細沢であったので自分は一度驚いた。

しかし彼が一寸の怪我もしていなかったので何よりだった。

戦闘機で怪我一つしないとは全く奇跡的だ不幸中の幸いというがものであろうと。


次回に続く

※原文から手入力で起こしている為、誤字脱字等がありましたらお詫び致します。







追記

2018/4/13

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