切り立った崖の先端に何かがある。吹き荒ぶ風。カミソリのような冷たい鋭さと悪魔の雄叫びが飽和した風の中にそれはある。下を向かなければ呼吸すら満足にできはしない。今すぐ風に背を向け、
逃げ出してしまいたい。そこに向かうのは、向かおうとするのは初めてではない。幾度も目にしてきた。その度に見ないようにしてきた。足を一歩踏み出せば瞬く間に泥々とした怨念の様なモノに絡めとられ地中深くに誘われる。
これは何か。
地中に引きずり込もうとするこの力は。
その熱烈な抱擁に、一滴の雫も落ちぬほど絞られて枯れる。これは何か。優しさだ。慈しむ心だ。暖かいモノだ。甘美な果実だ。極寒の氷壁の前で絶望する私への施しだ。
ありがとう。とても素敵な贈り物だ。これが無ければ今は無かった。なんと心地よいことか。このまま、この温かいモノに包まれていたい。けれど、もう行かなければならない。その手を放してくれないか。愛しい私よ。見えるかい。あの崖の先端をご覧。石がぽつんと立っているだろう。あれは多分、私の墓だ。
そしてそれは私の背後から射す光で金色に輝いている。
確かめに私は行く。あの墓に私の名が刻まれているのかを。私は途中だ。だから生きているのだ。私よ、何故そんなに不安そうな顔をしているのだ。安心してほしい。私は私を裏切るようなことは決してしない。私は向かう。あの場所へ。
もし、そうだ、私が膝をつき、進むことを諦めた時、その暖かな毛布と甘美な果実を携え、私の側に来ておくれ。
私はそれを背中で語ると冷たく荒れ狂う風は春の心地よい風になり、私は再び歩き始めた。
やがて嵐の産声が、何処か、遠くから、静かな風に乗り私の体に触れた。私をそれを愛さずにはいられない。来るがいい。
それが破滅の嵐でも一向に構わない。壊せ。殺せ。私を破滅させろ。それがあるから生きているのだ。生きているからそれがあるのだ。
逃げ出してしまいたい。そこに向かうのは、向かおうとするのは初めてではない。幾度も目にしてきた。その度に見ないようにしてきた。足を一歩踏み出せば瞬く間に泥々とした怨念の様なモノに絡めとられ地中深くに誘われる。
これは何か。
地中に引きずり込もうとするこの力は。
その熱烈な抱擁に、一滴の雫も落ちぬほど絞られて枯れる。これは何か。優しさだ。慈しむ心だ。暖かいモノだ。甘美な果実だ。極寒の氷壁の前で絶望する私への施しだ。
ありがとう。とても素敵な贈り物だ。これが無ければ今は無かった。なんと心地よいことか。このまま、この温かいモノに包まれていたい。けれど、もう行かなければならない。その手を放してくれないか。愛しい私よ。見えるかい。あの崖の先端をご覧。石がぽつんと立っているだろう。あれは多分、私の墓だ。
そしてそれは私の背後から射す光で金色に輝いている。
確かめに私は行く。あの墓に私の名が刻まれているのかを。私は途中だ。だから生きているのだ。私よ、何故そんなに不安そうな顔をしているのだ。安心してほしい。私は私を裏切るようなことは決してしない。私は向かう。あの場所へ。
もし、そうだ、私が膝をつき、進むことを諦めた時、その暖かな毛布と甘美な果実を携え、私の側に来ておくれ。
私はそれを背中で語ると冷たく荒れ狂う風は春の心地よい風になり、私は再び歩き始めた。
やがて嵐の産声が、何処か、遠くから、静かな風に乗り私の体に触れた。私をそれを愛さずにはいられない。来るがいい。
それが破滅の嵐でも一向に構わない。壊せ。殺せ。私を破滅させろ。それがあるから生きているのだ。生きているからそれがあるのだ。