※どちらかというと片寄った小説なので好まない方は読まないで下さい。
なぜか、「女」に好かれることが多い。
私の性別は女。別に見た目がかっこいいとかかわいいとか、
そういったことは一切ない。
それなのに、女が寄ってくるのはなぜだろう…。
いつからか、それらを拒絶するようになった。
仲のいい友はよほどこざっぱりした人しか関係を築かないようにした。
それでも、バレンタインに何かしか理由をつけてチョコを渡されるようなら
その関係も希薄なものになる。
私は、吐き気がする。
「女」という形を持った人物が私に好意を持ったとわかると体調を崩す。
お見舞いに来たといって押し倒されたことさえある。
女なんか嫌いだ。
恥じらいも遠慮も奥ゆかしさもない奴らばっかりだ。
再度行っておくが、私は女だ。
たとえ男に生まれてこようが、決して女なんかと付き合いたくはない。
吐き気がする。
男の友人は何人もいる。
とても楽だ。ホッとする。
僕は何かの手違いで女に生まれてしまったのではないか。
バイト先に変な女が現れた。
菊池凛というなんの捉えどころのない普通の女だ。
でも、ちょっと違うんだ。
目を合わせて喋っても、嫌な感じを受けない。
それは初めての体験だった。
なぜか、彼女といるといつもの緊張した態度などとる必要もなく、普通に空気を吸える、そんな空間になるのだ。
こいつ、まさか男か?
一瞬そんな予感がしたが、直感的に男にしかない独特のオーラのようなものが彼女には全く感じられなかった。
特殊な女もいたもんだ。
それとも、私が世の中を狭く見すぎていただけなのか?
彼女とは2年ほどバイトを共にしてきたが、彼女以外にそんな特殊な感覚を
感じた女には一度たりとも出会わなかった。
聞こえが悪いかもしれないが、彼女は淡々とその空間を支配していた。
ロッカー室で髪を束ねるしぐさ、客に提供する当たり前の作り笑い。
私に話しかける際のちょっととぼけたような表情。
たまらなかった。
私にこんな空間を与えてくれた彼女に感謝し、いとおしくなってしまった。
今だけは、普通の関係と言われたくて自分が男だったらよかったのに、と思った。
私が彼女を見る目は 様変わりした。
まるで見守るように。大切なものを包むように。
彼女は口にした。
「何か いいたいことあるの?」
びっくりした私が動揺して数歩よろめくと、彼女はじっとこちらを見て私のもとに踏み込み、そっと私の唇に自らのそれを合わせた。
…
「なんか、こうしたくなっちゃった。」
彼女はふふ と笑って後ろを向くといつもどおりしゃんとした姿勢で私の次にとる行動を待っていた。
後ろを向いたままの彼女の後ろに立ち尽くし、
「やられた。」
自らの身体を彼女に委ねていた。
fin.