2015年 第3回ふくしまの子どもたち
信州まつしろサマーキャンプ報告(上)

3回に分けて今年度のサマーキャンプ報告を掲載いたします。

●今回のキャンプについて

 3回目の「信州まつしろサマーキャンプ」は、11家族34名の参加
者で、内保護者が12名、小学生13名、幼児が8名でした。小学生も
低学年が多く、子どもたちは今までよりも全体的に小さな子が過半
数を占めました。初めて保養キャンプに参加したという家族も数家
族あり、その中には原発事故以来他県に避難していたものの今年福
島県に戻ってきたという例もありました。また福島県以外で栃木県
からも2家族が参加しました。

 以上の今回のキャンプの特徴からも、原発事故以来4年が過ぎて
もなお放射能被ばくについてのきちんとした対策もなく、また信頼
できる情報が得られず日々思い悩み、子どもたちを守るために必死
となっている保護者の様子が伝わってきました。それだけに改めて
保養キャンプの継続的な実施の必要性を痛感しました。

 チェルノブイリ原発事故から29年が経過してもなお、国家をあげ
て子どもたちの保養キャンプを実施しているウクライナやベラルー
シの例を見てもそれは明らかです。そのウクライナやベラルーシで
は保養キャンプの子どもへの有効性がすでに実証されています。そ
れにもかかわらず日本での保養キャンプへの行政の支援や理解はあ
まりに乏しいのが現状です。その結果福島県や東日本の放射能汚染
地においては、親同士が保養キャンプについておおぴっらに語るこ
とすら困難な状況にあります。今こそ保養キャンプが子どもたちの
命と健康を守るひとつの手段・権利としてきちんと認められるべき
です。政府レベルでそれが実施されない中では、今後とも民間・市
民ベースの保養キャンプが必要とされています。

 とりわけ自然豊かで、福島から距離も比較的近い信州への期待が
大きく、今回も募集を開始してすぐに定員をオーバーしてしまいま
した。私たちは市民のボランティアによる活動であり、スタッフも
限られそれほど大きなことはできませんが、今後ともより良いサマ
ーキャンプの実現に向けて努力していきたいと思います。

 宿泊は長野市松代町にあるJA長野中央会の研修所だけではなく、
飯綱高原のデイキャンプの後、近くにある戸隠神社そばの旅館に今
回初めて1泊しました。そのため昨年までよりも余裕を持ってデイ
キャンプが行え、また翌日も戸隠高原のキャンプ場・牧場でゆっく
りと過ごすことができました。

  反省点もいくつかありますが、今回の「まつしろサマーキャンプ」
も多くの皆様のご協力を得て、事故もなく無事に終えることができ
たことを報告いたします。宿舎を提供いただいていますJA長野中央
会様をはじめ協力いただいた個人・団体の皆様に感謝申し上げます
とともに、今後とも長期的なご支援をお願いいたします。

7月27日(月)晴れ夜雨

 郡山駅前はにぎやかで朝から青空。バス発着場は木陰も、ベンチ
もあり、集合場所としてよい。早速、親子連れに声を掛けたら、福
井県に保養に行く人達で、スッタフの方と情報交換。

 9家族27人集合、予定通り9時15分、大型バスで出発。那須
インターで2家族6人が加わり、参加者がそろいました。那須イン
ター乗車組は栃木県那須町と大田原市在住の方々。バスの中で少し
お話しできました。今回、いわき市から高速バスで幼子3人と共に
2時間かけて郡山に集合した家族、また、原発事故後、車で富山に
行き着き、知り合いもないまま1年間富山で暮らした家族、など。
ずしんと重いものが込み上げてきました。DVDを観ながら午後2時
半過ぎ、長野市松代町のJA研修所に到着。

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 最初に、オリエンテーションで自己紹介など。宿舎を提供して下
さったJA長野中央会様からはスイカやジュース、本のプレゼントを
いただきました。おやつを食べ、疲れをとった後、歓迎のおたのし
みコンサート。プロの演奏家グループ「MOIRAI」の松沢悠さん(ソ
プラノ)、早川育さん(フルート)、滝澤ヒトミさん(ピアノ)が
ボランティアで演奏をして下さいました。「サウンド・オブ・ミュ
ージック」の曲、ジブリ映画のテーマ曲などの素晴しい演奏を聴い
たり、一緒に歌ったり、音楽に合わせてマラカス(ペットボトルに
乾燥トウモロコシを入れたもの)を鳴らしたり。最後は音楽物語
「スイミー」の大きな絵本を観ながら、語りと音楽を楽しみました。

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 その後は宿舎の周辺をみんなでのんびり歩き、しばしの散歩を楽
しみました。夕食・入浴後は、ほとんどの子供たちがわいわいとに
ぎやかにロビーで過ごしました。ロビーには絵本、紙、はさみ、マ
ジックなどを用意。「スイミー」のように皆で力を合わせて行こう
という願いを込め、模造紙に描いた大きな魚のアウトラインに、小
さな魚の形の紙にメッセージを書いて貼り付けたり、絵本を読んだ
り、工作したり。スタッフとお母さん方で、翌日のプールのために
水泳帽に目印のリボンを縫い付けたりしました。

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7月28日(火)明け方まで雨後晴れ

 前夜の雨も朝方には上がり、松代町の畑にて、野菜の収穫を行い
ました。起こした土の中からみんなでジャガイモを掘り出し、キュ
ウリやトマトを取り、枝豆の鞘をもぎ取り、たくさんの子どもたち
の手であっという間に大収穫となりました。

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 収穫した野菜と共に近くの公民館へ移動し、全員で昼食作り。地
元の方々に、長野の郷土食ニラせんべいの作り方を指導していただ
きました。参加者全員、ニラせんべいを作るのも食べるのも初めて
でしたが、おいしいと好評でした。他にも朝収穫した野菜、差し入
れの野菜など新鮮な食材で、山盛りの食卓となりました。

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 保養においては、環境の良い場所で過ごすことと同時に、食事も
重要な要素だと思います。滞在先のJA研修所や、毎日の出先におい
ておいしい食事を提供していただいていますが、参加者やスタッフ
が更に食材や調理に関与できたらと感じていました。また、昨年の
参加者より「農業体験もしたかった」という声もありました。そう
したところ、キャンプ地松代町内の田中さんより畑を提供していた
だけることになり、今回の収穫体験を実現することができました。
田中さんはじめ地元の方々には今年の初めより、各種野菜の作付・
管理、更には食事作りの段取りと大変ご尽力いただきました。
 今回の試みでは、質素ではあるが安全な食材を使った食事を提供
できたことと、地元松代の方々に関わっていただくことができたこ
とが良かったと思います。今後、少しでも多くの地元の方に関わっ
ていただくことにより、放射能汚染に不安を感じているより多くの
方々に、より長い期間の保養を提供できる道が開けていくことを願
います。

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 昼からはすっかり晴れて暑くなり、松代の青垣公園プールにて水
遊びを楽しみました。
 夕食の後は、ボランティアグループ「きもちいい快」による温熱
療法を行いました。大人にも子供にも気持ちがいいと評判よく、順
番待ちの行列を作って手当てを受けていってくれました。簡単に実
施でき、疲れた体を休め、継続的に実施すれば免疫力を高める方法
なので、参加者の皆さんがキャンプから戻ってご家庭で実施しても
らえるいいと思います。

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