あれだけの事故で。何故?

救急車の中でも。運び込まれた病院でも首を傾げられた。
・・・それくらい、酷い事故だったそう。

仲のいいドクターに「かる。さん、どうして?」と聞かれて「受け身を取りましたから」と言ったら「え???」と絶句され(笑)

今でも不思議。10年経っても耳に残っている。空に跳ね上げられ、アスファルトに叩き付けられる寸前、死を覚悟した時、耳元で「受け身!!」と叫ばれた。とっさに「はいっっ!」と左手でアスファルトの路面を叩き身体を丸めて頭を庇い滑って行った。

あの声は?
男性の声。それもどこかで聞いたことのあるような。

亡くなった旦那さんは柔道家だった。オリンピックでメダルを取った選手とも稽古をしていたほど、この田舎にしては上級の指導者でもあった。
でも、子供たちや私には空手を奨めたけど、組み手で飛ばされた時の為に、とよく受け身の稽古を付けてくれていた。

そのおかげか、空手道場でかなりヘビィなスパーリングで飛ばされても大したダメージを受けずに済んでいた。

だから。
あの「受け身!!!」は旦那さんがお彼岸で空から降りて来るときに私が跳ねられたので生きる為に叫んでくれたのではないかな、と思っている。

ただ、命は助かったけれど、怪我は酷かった。
三年間のリハビリ生活。
事故後一ヶ月目には激痛に歩けなくなり、車椅子の生活までしたっけ。三年間もリハビリをしたけど、完治はせず、わずかな不自由は残った。

このアクシデントがとんでもない経験をするきっかけになった。


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