No.1 第1章 てるてる坊主は怨霊なのか?
第1章 てるてる坊主は怨霊なのか?
●てるてる坊主の悪夢
私は古代探偵である。名前は山本太郎という名前だ。
どこにでもある名前だが、珍しい仕事をしている。私は、古代の歴史の謎を探求する探偵なのだ。
ある日、朝近くに怖い夢を見た。てるてる坊主に、夢の中で、お願いをしていた。次の日が遠足だったからだ。
「てるてる坊主、てる坊主、あした天気にしておくれ」
そうして、手を2回、パンパンと打っておがんだ。すると予想外のことが起きた。思いがけず、てるてる坊主が返事をしたのである。
「晴らす(はらす)」
「晴れにしてもらえるんですね、ありがとうございます」
私は喜んで、お礼を言ったが、てるてる坊主から帰ってきた返事は意外なものだった。
「晴れにはしない」
「どういうことですか? 晴らすって、言ってくれたじゃないですか」
「天気のことはどうでもいい。俺は、濡れぎぬ(ぬれぎぬ)を晴らすのだ」
「濡れぎぬを晴らす?」
「そうだ。それに、恨み(うらみ)を晴らす」
「恨みを晴らす? 何の恨みですか?」
「俺を縛り首にしたヤツに、恨みを晴らしてやる。ワハハ。ワハハ。ワハワハハー」
そこで目が覚めた。汗をかいていた。怖い夢だった。誰なんだろう、この、てるてる坊主は……。誰なのか聞いてみればよかったと思ったが、すでに遅い。もう目が覚めてしまった。
考えてみると、なるほど辻褄(つじつま)が合っている。普通は、てるてる坊主を物干し竿に干す。……ということは、てるてる坊主の着物はぬれているのだ。
すると、こうなる。てるてる坊主は、天気を晴れにすることを使命としてはいないのだ。自分は濡れ衣を着せられている。だから、この濡れた着物を着ているのは気持ちが悪い。だから、着物を乾かすために天気を晴れにするのだ。なるほど。
子供というのは残酷なものだ。そういう、てるてる坊主の気持ちを逆手(さかて)にとって、遠足のために天気を晴れにしてくれと頼んでいる。おまけに「晴れにしないと首をちょん切るぞ」とも言う。
てるてる坊主の夢は、すごく理屈が通っている。すごい屁理屈ともいえる。てるてる坊主の夢は、いったい誰が考えたのだろう。私の脳みそからは、こんな理屈ぽい話は出てこない。それだけは確かなことであった。
うーん、……考え込んでしまった。