今回はこちらの『醸し人九平次』です。

ちゃんとした場所に行けば、愛知で『九平次』は割と楽に通常価格で入手できます。
なお僕の好きな『rue Gauche』は、東京都内にあるはせがわ酒店様でなければ入手不可な模様。
SAUVAGEとはフランス語で「ソヴァージュ」と読み、"野生"という意味です。
雄町という品種が突如現れた野生種であり、かつ野生味のある味わいであることに由来を持つのでしょうか。
飲んでみましょう。
開栓したてはまだ固めなところがありながらも、微炭酸によるシュワシュワ感と酸味で楽しめるところがあります。穀物系の上立ち香、青草のような香りもそこそこに。開栓したのは休日の午前9時。このお酒を飲みはじめてから10分くらい経ったのち、近くの小学校から「えいっ!えいっ!おおぉーっ!」と勝鬨を上げる声が聞こえてきました。
漢字では「曳曳応」と書くんですよね。戦国時代あたりからこの鬨は使われているとか。
勝鬨が上がったとき、それに呼応するかのように――そこそこワイングラス内のお酒も温度も上がってきたからかもしれませんが――ふくよかで円熟した甘味が広がってきました。『九平次』ならではのエッジの効いた酸味の効果もあって立体感のある旨味が冴え渡っています。
雄町は開けたてを楽しむというのは不向きで、少し待って味が広がったところを飲むのがいいのかも。
二日間待って開けてみる。
果実系の上立ち香がより強くなっています。味わいもジューシーさが増し、水飴にも似た甘味がじわりと染み渡っていく感じに。
雄町らしさが綺麗にまとまった結果、極めてバランスのいいお酒となっています。成績優秀な不良とでも言いますか。この二律背反とした感じも悪くありません。万華鏡のごとく変化する味わいを楽しむことも醍醐味でしょうし。しかし100%の飲み頃なのかと言われたら難しいところですし、こういうのを見極めるのって難しいなぁ……
それと『九平次』は個人的には山田錦のほうが好みかな?
切れ味のある酸味と山田錦の上品な味わいから洗練されたスタイリッシュさを発揮しているのは山田錦のほうかなって。雄町は問題のないレベルとはいえ傑出した何かが感じられなかった感じですかね。
あと、この雄町を『彼の地』『human』ほど磨いたらどうなるのかなって。でも雄町は低精白でも深い味わいになるため、磨けばいいって品種じゃないですからねぇ。だから高精白を出せないのかも。おそらく50%ぐらいがバランス的にもいいのかもしれませんしね。
問題なく美味いのは分かりますが、ただそれだけに留まらぬ『九平次』、畏るべし……