今回のお酒は『澤屋まつもと』(松本酒造)
 今回は珍しく余談があまり無いです。




 酒どころ京都伏見の銘酒です。江戸時代から続く蔵は《伏見の日本酒醸造関連遺産》として経済産業省の近代化産業遺産に指定されているそうです。このことだけでも分かるように伝統的な酒蔵なのですが、『澤屋まつもと』の銘酒自体は比較的新しいものだそうです。
 
 なお、副題の「」とは武道や芸術などに由来する言葉であり
→伝統を守る。昔から受け継がれてきた精神を守り、基礎や型を覚え、心技の核となるものを確立すること。
→伝統を破る。他のところから良いものを持ってきて自分の心技を発展させること。
→伝統から離れる。守と破の両方を活かしながら独自の新しい価値を創造すること。
 だそうです。まさに伝統と革新を大事にしていることを宣言する言葉。
 




原料米/山田錦100%
アルコール分/15度
精米歩合/50%

 去年から最高峰の山田錦を栽培する兵庫県加東市東条地区の特A級山田錦を使用するようになったとか。全量使用を目指すとはいいますが、今契約しているところはどうするんだろとか思ったり。
 「原料に勝る技術なし」とは何ともワイン的な。テロワールにはこだわる精神ということでしょうかね。

 開栓したては固め。セダインも少々。炭酸によるシュワシュワ感と酸味。
 甘味はほとんど無し。伏見の女酒というイメージとはかなり違い、非常にクリアな飲み心地。ほんのりと米の旨味とマスカットあるいは柑橘類のような香りをほのかに感じるも酸味に特化させた造り。
 温度が上がっていくにつれて輪郭を表す酸味。
 このスタイルは記憶があるぞ……?『奈良萬 純米吟醸 中垂れ』という福島の地酒です。ブログ開設前に飲んだことがあり、待てば待つほど美味いお酒でしたね。微炭酸という線で考えれば『風の森』とも近いですか。 
 そして、『奈良萬』『風の森』にも共通しているのは「開栓してからしばらく経って、炭酸が抜けてからが本番」ということ。
 これは以前『風の森』を買ったとき、酒店の方から教わったことでもありましたね。で、そこから燗に付けても美味いとも。
 しかし『奈良萬』や『風の森』と違うのは甘味をほとんど覗かせない点。いわばソーダ割りに使う炭酸水に類似。だもんで食中酒としてはいいのですがビールやスパークリングワインのようなノリで飲むことは推奨できないタイプです。純大吟ゆえに燗もあまり良くは無さそう。
 しばらく待つことにしましょうか。
 
【開栓1日目】
 含み香が目立ってきました。セメダ●ンはまだ抜けず。
 炭酸が抜けてきて、柑橘類のような香りも鮮明に出始めてきます。
 でもまだ固いな……
 
 
【開栓2日目】
 きたきたきたー!
  はっきりとみかん!
 セメ●インの香りよりも吟醸香が勝るようになり、心地よい酸味と柑橘類系の香りが前面に出てきました。バニラのような香りも。飲み口も京焼の表面のような滑らかさ。
 確か松本酒造様の杜氏は、『醸し人九平治』のところで修行をしたという話があります。この酸味の奥に隠れた味わいは『九平治』に似ているかも。
 常温に近くなればなるほど、少しずつジューシーさを感じるようになり、凝縮された旨味を感じます。
 でもって雑味も無いし付け香も無いですし、まさにここまで透き通っているとクリスタル。この状態だとスルスルと行けちゃうかも。危ない危ない……
 
 総合的に見ると、やっぱり「甘味を抑える代わりに雑味感を減らした奈良萬」という評価になってきますかね。どちらも本領発揮には「待つ」ことが要求されますし。
 
 なお、アテですがさんまの蒲焼きはまあまあ、さばの水煮とはそれなりの相性。塩辛や和菓子(これは意外でした)とはいい感じ。
 食中酒向けなんだけど、今までの食中酒とは違います。同じ伏見の食中酒でも『玉乃光 94』とは別の進化を遂げている感じ。況してや『伯楽星』や『うまからまんさく』などとは完全に毛色の異なる食中酒のもうひとつの回答か。
 
 
 『澤屋まつもと』は「待つ」ことさえできれば優れたお酒ですね。勿論食中酒としてならいつでも楽しめますけど、某有名RPG三作目の魔王みたいに微炭酸という名の衣を剥ぐ必要があるようですw


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