地元に立ち寄り買ったお酒がまだ結構残っていて……
 そのなかでも、ある理由で面白いと思って買ったのがこの『昇龍蓬莱』でした。
 
 



 この作品を買う数日前、地元の友人と某有名デパートの酒売り場でこんなお話をしていたのです。
 
「この『榮川』ってさ、なんでこんな精米歩合なんだろうな」

 赤いラベルの『榮川 旨口純米酒』(榮川酒造)を取り出して友人は僕にそう訊いてきました。

「80%って全然磨いてないじゃんか。実際問題どういうお酒なんだか想像つかねえべよ」
「○○○(デパート名)の冷蔵庫でもない棚の日本酒だから普通酒じゃないか?」
「いや、だったらなんで純米なんだべ?そういう精米歩合に敢えてしてるお酒じゃねえべか?わかんねえけど……」

 という感じですね。
 僕はあまり米を磨いていない日本酒もあるという話を漠然とではありますが聞いたことがあり、そうした類いのものだと思ったわけです。
 
 ただ、調べてみるとそうした日本酒も結構ありました。いわゆる「低精白」と呼ばれる日本酒のことです。




アルコール分:17度
精米歩合:77%
日本酒度:+8
徳島県産山田錦100%使用
製造年月:29.01(27BY)


 岡崎に向かう当日、地元の酒屋に立ち寄って、せめて地元に低精白のお酒があるなら……と思い買ってきたのがこの『昇龍蓬莱 山田錦77』だったわけです。上の写真にもあるように精米歩合77%という数値にただならぬものを覚えたものでしたので。
 
 『昇龍蓬莱』の大矢孝酒造様は神奈川県愛甲郡愛川町の蔵元。
 この蔵元のある地域は渓流のある大自然です。少し東側(と言っても山を超えますが)には、かつて後北条家と武田家が激突した三増峠の戦いの舞台があります。
 もうひとつの代表銘柄として『残草蓬莱(ざるそうほうらい)』という銘酒がありますがこちらは速醸タイプで、『昇龍蓬莱』は生酛タイプの銘酒となります。
 日本酒ファンからの評価も高く、これまた神奈川県を代表する銘酒のひとつと言えます。


 では飲んでみましょうか。
 うおおお!
 雑味の有無をも超えた凝縮された米の旨味!そして酸の伸び!
 ひたすら圧倒的に米の旨味です。強烈なまでに突き刺さるこの伸びのよさ……まさにドラゴン!
 ドラゴンの吐く息の如くに、飲む者を怯ませるレベルで米が襲いかかる!
 こないだの『飛龍』が東洋の龍のような優しいお酒だったのに、こちらは西洋のドラゴンを彷彿とさせるパワフルさに満ちています。




 ぬる燗にしてから織部で飲んでみました。
 おお!旨味と酸味が全身を駆け巡る!
 より味わいにまろやかさが出てきます。だから「まろやかな原酒」だったのかな……
 『天明 焔』にも似たグーンと伸びる酸味が心地よく、ドラゴンの天に昇るさまが思い浮かぶかのようです。
 そして例によって「神奈川県の地酒は燗が合う」という法則がこの銘酒にも適用されました。神奈川イコールお燗というイメージがますます強くなるなぁ……

 結論としては「低精白は旨味がはっきりしている」と言うのかな……?
 磨けば磨くほど日本酒は美味くなる、というわけでは無いのかもしれません。大事なのは、どれほどそのコンセプトに合ったものなのかどうかなのかもしれません。
 
 『榮川』の赤いラベルの日本酒も余計に気になってきます。今度どこかで飲もうかな……
 後で訊いたらなかなかいけたと言ってたから余計に気になる……



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