しばらく更新が滞っていました。歯科医にも行ってましたし麻酔のせいでお酒を利けなかったこともありましたが、もうしばらくの間少しペースを落として投稿致します。
 
 前回の『七本鎗』の記事では僕の自己紹介をいくつか兼ねているかたちではありましたが、まぁ考古学者下がりの会社員ということでひとつお願いします。
 ただ歴史を学んでいると、あらゆる歴史はひとつに繋がっていることに気がついてきます。
 よく歴史学で議論となる「なぜ太平洋(大東亜)戦争は起こったのか」を考察すると、まず日露戦争以降の日米関係に行きつき、その原点は幕末の開国をめぐる論争に繋り、その更に原点を追うと徳川幕府の鎖国政策や16世紀における織豊政権の富国強兵政策、より深く入ると世界史における15世紀以降の大航海時代や南北朝時代の朝廷の正統性の所在とか、ストーリーがどんどん遡っていきます。果ては「邪馬台国はどこにあるのか?」「秦氏などの渡来人の勢力は日本においてどれほどあったか?」「日本人とユダヤ人は同じ祖先なのか?」といったトンデモなところにさえも繋がってしまいますし……
 
 何が言いたいのかというと、要は歴史というジャンルは、入り込んでしまうとどんどん深みに入ってしまうことです。僕も考古学専門なのにあらゆる歴史ジャンルに踏み込んでいました。
 それは軍事史も例外ではありません。長浜での合宿のときの仲間も軍事好きなのが多く、空母やら戦艦やらのプラモ作りを楽しんでいました。僕もその影響を受けて伊号第五十八潜水艦(大戦末期に活躍した潜水艦。初心者ゆえ控え目)のプラモを造ってましたし、今も『艦これ』をやってますからね。
 
 そして、そんな人間ゆえにどうしてもこのお酒は目についてしまいましたし、買ってしまいました。
 






 『純米大吟醸 飛龍』(新澤醸造店)です。

 アルコール分 16度
 精米歩合/50%
 製造年月 16.12(28BY)
 
 なにせ銘が『飛龍』です。この銘酒を見て、航空母艦飛龍を思い浮かべるのは僕だけではないと思います。
 空母飛龍は第二次大戦時代の軍艦であり、空母戦のスペシャリストである山口多聞少将の指揮のもと、空母機動部隊のひとつ第二航空戦隊の中核として数々の武勲を立てた名艦。ミッドウェー海戦においては僚艦の蒼龍や第一航空戦隊の赤城、加賀が沈む苦境のなかひとり残るも反撃に転じ、沈んでしまうものの刺し違えるかたちで一矢報いています。
 この飛龍の反撃――敗北も当然といえるなか、たとえ最後の一艦になろうと叩いてみせた英雄たちの意地と誇りに、胸が熱くなるのは言うまでもありません。
 


 写真は『艦これ』の飛龍さんです。僕の鎮守府では改二(ケッコンカッコカリ済)です。
 左側の「ヒ」の字がついた飛行甲板だけでなく、鉢巻きの赤い丸、九七式艦上攻撃機(友永丈市大尉機)など、MI作戦時をモチーフにしているのがよく分かります。
 
 そんなイメージが沸くくらいだから期待もできましたが、注目した理由は名前だけではありません。蔵元も素晴らしいのです。
 新澤醸造店は『伯楽星』『あたごのまつ』で知られています。『伯楽星』は「究極の食中酒」の異名で知られており、『あたごのまつ』は日本酒品評会で1位を取る実績があるなど高い評価を持つ銘酒です。
 特に『伯楽星』は「究極の食中酒」に相応しく色々な料理を引き立ててくれるため、僕は食事メインの居酒屋で見かけたときはよく頼んでいますね。
 『飛龍』を見つけたとき、名前だけでなくそうした信頼性のある蔵元のお酒なわけだから、外れるわけが無いと思ったわけです。
 
 
 いつもながら余談が過ぎました。いい加減に飲みますか。
 
 ……優しいお酒だなぁ。
 辛味は控え目で、甘味が中心。ほのかにマスカットのような酸味に、きめ細やかな米の甘味がじんわりと染み込んでくる。和三盆?いや、雄町のお酒に近いスタイルですね。
 朝日という米のお酒は始めて飲みますが、もともと食用米のようで、あのコシヒカリのルーツに当てはまるとか。岡山が主な産地であり、だから雄町にも近くなるんですかねぇ。
 現在の岡山県の一部に当てはまる美作国は「うま酒の国」から来たとされていますし、旧吉備国は雄町といい日本酒米の王国のひとつなんですかね……
 なお、山口提督はパイロットにスパルタ式の訓練を課していたことから『人殺し多聞丸』の渾名がつけられました。このお酒も山口提督が運命をともにした空母飛龍にちなんでそんな山口提督の苛烈さがイメージされるような鋭い辛口なのかなって思っていました。しかし、このお酒は『飛龍』そのものの名の如くゆったりと空を飛んでいる龍のようなイメージです。すごく平和な感じですね。
 全体的にバランスが良く、単体でもいけますが食中酒としても優れています。高級な酒米ではないためか値段も純大吟なのに1,500円ほどと安めであり、コストパフォーマンスにも優れています。

 そういえば、このお酒を買うとき蔵元の方がいらっしゃっていたのですが、「天空を飛ぶ龍のように世界に向けて発信していくためのお酒」と仰っていましたね。空母飛龍というイメージでは無いのも当然か……ですが、世界に日本という国の力を示していこうという願いがどちらにも込められているには違いありませんけどね。

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