今回はいつもの家飲みではなく、友人と飲むため東京へと参りました。
 
 持ち込み可能なところです。
 そこで僕が今回持ってきたのはこの『山桜桃』(須藤本家)です。
 『山桜桃』は「ゆすら」と読みます。
 





 須藤本家『純米大吟醸 山桜桃 無濾過生々』
 アルコール分 15.0度以上16.0度未満
 原材料 米(国産)、米麹(国産米)
 精米歩合 40%

 『山桜桃』を醸す須藤本家は日本最古の蔵元とされています。(ただし諸説あり)
 なんと創業は1141年(永治元年)。西洋では第二次十字軍を派遣した6年前、日本では保元の乱の15年前です。平安時代末期のまさに『平家物語』の時代であり、鎌倉幕府よりも古い時代から関東の地で歴代幕府の合計よりも長く在るのです。
 酒どころ灘の盟主にして赤穂浪士の討ち入り前に浪士が飲んだという逸話で知られる『剣菱』の剣菱酒造が1505年(永正2年)創業。秋田県の有名蔵元にして『飛良泉』で知られる飛良泉本舗が1487年(長享元年)創業ですが、それらよりも300年以上も古くからの蔵元でありその歴史の長さたるや相当のものがあります。
 その最古の蔵元の家訓は「酒・米・土・水・木」
良い酒は良い米から、良い米は良い土から、良い土は良い水から、良い水は良い木から、良い木は蔵を守り酒を守る、という意味なのだそうです。五行説に従った自然の摂理なんですかね。奥が深い……
 他の銘酒は『郷乃誉』がよく知られており、茨城ではメジャーな銘酒です。また、高級品として『花薫光』があります。『花薫光』は世界的に有名なワイン評論家のロバート・パーカー氏が高く評価したのみならず、世界最高級のお酒を醸す『ロマネ・コンティ』の当主からも70万円相当のお酒と評価されたとてつもないお酒ですね。
 
 長くなってしまいました。ただ、蔵元があらゆる点で桁違いなところゆえ、これだけでも紹介の価値はあると思いましたので。
 感想に移りましょう。

  あしひきの 山桜花 日並べて かく咲きたらば いと恋ひめやも
  ――山部赤人(『万葉集』巻八より)

 この和歌がイメージされました。
 一口入れた瞬間、鮮烈に広がる香り!薫り!馨り!!
 まるで花束のような複雑なアロマが鼻腔を直撃する!
 桃やさくらんぼのような甘味もほのかに感じられます。渋みと辛みも覗かせ、五味のバランスも見事。そして最後はすっきりとした余韻とともに収斂されていきます。
 まさに上の和歌にもある山桜に喩えられる諸行無常の理。八百万の神々が住まう葦原の中つ国に生きとし生けるもののDNAに刻まれた万葉の記憶を呼び醒まし、大和民族の魂の奥底まで揺さぶるような感じです。
 
 このお酒は友人も絶賛でした!
 ご両親が会津出身であり、僕に会津のお酒を嵌まらせた人でもあります。
 『十四代』『獺祭』のようなお酒よりも『田酒』や『磯自慢』のようなお酒が好きな人なのでどうかなとは思いましたが、彼曰く「今まで飲んだなかで最も美味い日本酒かも」「茨城にこんな日本酒があるとは!」「人を幸せにするお酒」と驚かれましたね。
 
 ちなみにこのお酒を飲んだのは二回目。
 360mlほどのものを飲んだところあまりに美味かったので持ってきたという背景もございます。
 なお『山桜桃』を飲むときは、冷蔵庫から出したあとは若干置いて、常温になってから一気に飲むのがお勧めですかね。僕の場合、高萩から東京に移動するなかで適温に調整してしまいましたけどもね。


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