「神の血筋たらん大王を、神の神託に問う。その示された答えに、我ら兄弟は従うつもりである。よってこの場に居合わせた全ての者も、その神の声に意を唱えず従うと誓って欲しい」

 

 物腰は穏やかであるが、どこか有無を言わせぬ響きを宿すその声に、腹の内はどうであれ、その場の豪族達は肯定の意を示し平伏する。全ての者が平伏する光景を見回した後、億計王は隣の弘計王と視線を交わした。弘計王もその視線に軽く頷きを返す。

 

「では主役を神の代弁者へ譲るとしよう」

 

 まるで気負いの無い言葉で、億計王は皆の意識を上座から儀式の舞台へと移した。

 

 そしてそれを待っていたかのように、一際大きく銅鑼が鳴らされる。それは低く腹の底まで震わせるような音であった。間を置かず、今度は頭の骨を直に震わせるような高い金気の音を鳴らす小さな銅鑼が打たれる。その高低の銅鑼の音は時に交互に、時に重なり、少しずつ速度を速めながら、不思議な空間を作り上げていく。

 

 やがて大小の太鼓が律動を刻み始め、銅鑼の音に絡まりあい、奥行きを持たせる。 

 

頭の芯まで痺れさせるようなその音は、何度となく繰り返され、人々は次第に思考まで痺れていくような錯覚を覚えた。

 

人々が銅鑼と太鼓の音に意識を飲まれる頃には、上座から正面にまっすぐ伸びた通路の向こうに設えられた舞台には、準備万端の巫女と審神者(さには)琴の奏者が揃っており、既に十分な速度で打ち鳴らされる銅鑼と太鼓の音に重ねるように琴の演奏が始まる。

 

琴は巫女に神を降ろす為のものであり、巫女はその身に神を降ろし、神の意思を伝える。そして審神者は巫女に降りたモノが神であるのか、そうでないのか、又、それらが巫女の口を借りて語った言葉の解釈をするのが役割である。