少し前のことですが、ある知識人が変な話をしているのを見かけました。

その知識人は、馬鹿みたいな経済評論家を「正しい」と信じてるようだった。

面白いのは、その知識人が経済の考え方について語っていた事です。

こんな事を書いていました。

①現代の「専門学」と名のつくものは、価値観からの中立を装い、できるだけ脱倫理的・客観的な体裁を取ろうとする。しかし経済の現実を理解することにとって、ある学説や政策がどんな価値観を暗黙の前提にしているかを知ることは不可欠である。どんな言説も、純粋中立などということはあり得ない。中立、公正、脱倫理・没価値的・客観的な体裁を取っている言説ほど、じつはあるイデオロギーのドツボにハマっている傾向が強い。経済学に関してはことにこのことが当てはまるので、要注意。

②経済とは、現実の生きた社会における人間のダイナミックな活動である。したがって、その現実の活動からある法則性を抽出し、理論として提示されたものは、あくまで一つの仮説にすぎない。流動する現実がその仮説と食い違う実態を示すときには、仮説のほうを改めなくてはならない。しかるに、理論信仰に陥っている主流派経済学者たちは、そういう時、現実のほうが間違っていると固執する。

③経済を理解する上で重要なのは、国民生活にとってある不幸な現象がみられるとき（たとえば失業者の増加、賃金の低下、生活の困窮、企業の倒産）、なぜそうなるのかという問題意識を抱き続けることである。しかるにとかく学問の牙城に閉じこもりがちな「経済学者」たちは、概して理論の形式的な整合性にこだわり、こういう切実な問題意識に対して冷ややかな態度しか示さない。

なお、①～③については私もその通りだと思う。

問題は、これを書いた知識人が三橋貴明さんや藤井聡さんを支持している事です。

どうしてそんな事になるのやら。

これについての考察が今回のテーマです。

考察したうえでの結論を先に書くと、こうなります。

「経済評論家の誤魔化しや間違いに気が付くことは難しい。

だから①～③のような話をする人でさえ経済について間違う。」

この結論に至るまでの考え方の話をしましょう。

まずは、これから書く二つの話を見比べてください。

（１）

「減税をしても、金融政策をしてもお金が回りそうにない。

だから公共事業（財政政策）をしなくてはいけない。」

（２）

「減税をしても、金融政策をしてもお金が回りそうにない。

だから公共事業をしても結局はお金が回らなくなる。」

さて、どちらの話が正しいでしょうか？

こういう事を考えられない間は、いかに慎重であろうと経済評論家に騙されるでしょう。

①～③について気を付けている人であろうとです。

公共事業でもお金が回らなくなる理由については、これまでも何度か紹介した経済学の有名な式を用いて説明しましょう。

Ｙ（所得）　＝　Ｃ（消費）　＋　Ｉ（投資）　＋　Ｇ（政府支出）

という式があります。

で、この式から考えるなら、どうしてもＹ（所得）＞Ｃ（消費）となるんです。

ようは、

人々の一定期間の消費の合計は、

その一定期間の所得の合計を必ず下回る、

となるんです。

そして、所得と消費の差額が溜め込まれるお金になります。

ちなみに、こんなふうに整理して話をする人が少ないだけで、私が書いている話は当たり前のことです。

Ｙの数字がＧＤＰになるのですが、消費はＧＤＰの７０％くらいだと世間でも言われている。

これもＹ（所得）＞Ｃ（消費）という意味の話です。

それから、日本人の現金預貯金の合計が８００兆円くらいあるとも言われている。

Ｙ（所得）とＣ（消費）に差があり、しかもそれが大きいからそうなるんです。

所得と消費の関係は公共事業を増やしても変わりません。

だから三年くらい政府がお金をばら撒き、

それによって大勢の所得が三年の間は増えているとしても、

お金が溜めこまれて世の中を回るお金は減っていく。

そのことは、公共事業を勧めている人が用意したグラフにさえ現れています。

このグラフを見ると、公共事業を減らすとＧＤＰも減っているでしょう。

減税では景気が回復しないと言われている。

金融政策ならば一時的な効果しかないと言われている。

ただ、財政政策だってそうなんです。

理屈の上でもそうなるし、データを並べてもそうなっている。

　
ここまでを踏まえて、もう一度（１）と（２）を見てください。

どちらが正しいと思うかの答えは求めません。

考えてほしいのは、（１）が正しいという前提で考えていいのかどうか、です。

考えないのであれば、経済評論家に導かれるままその経済評論家と同じ結論に至るようになります。

①～③の話をした知識人もそうなっていました。

現実を見る事の大切さや、問題意識を持ち続けることの大切さを解っていながら、経済政策と呼ばれるものが全滅しているかもしれない事に気が付かない。

それから、財政政策を勧める人達は色々と変なのです。

例えば、新自由主義をやたらと嫌ってるのですが、嫌い方がおかしい。

また見比べてください。

【１】

効率や儲けを追求するのが新自由主義者だ。

【２】

政府が経済に関わることを嫌うのが新自由主義者だ。

さて、この二つのうちどちらが正しいでしょうか？

これについても、重要なのは【１】が正解だという前提で考えない事です。

世の中には頭のおかしい人もいる。

おかしな事をしながら、

「自分が咎められるわけがない、」

と思っている様な人がいる。

どういうわけか、そんな人は政府関係者に多い。

社会主義国家ならば、独善的な人が腐るほどいました。

資本主義の国にしても、価値観がおかしい人が大勢います。

シムシティーの感覚で人がろくに来ない博物館を造っておいて、何の反省もしない、というように。

自分達の『能力』や『価値観』に問題があり、それが国家の害になっている可能性は絶対に考えようとしない、という人が世の中には確実にいます。

そんな人を新自由主義者と呼ばれる人達は嫌ってきました。

いかに政府関係者が無茶苦茶かという話をする人だっていた。

ただ、嫌われる側の人達の反応は、社会主義の国でも資本主義の国でも同じです。

自分達が咎められているのに、それがまるで解っていない様な反応をする。

そんな人達が新自由主義者についてこの様に言います。

「効率や儲けを追求するのが新自由主義者だ。」

これを鵜呑みにするようなら馬鹿だし、

こんな話に影響を受けるだけでも害がある。

チャンネル桜の社長さんや、在特会の会長さんなんかが良い例です。

この人達には、橋下さんをまともに判断しようとした形跡がありませんでした。

「橋下は新自由主義的であり、

だから橋下は悪い人に違いがない、」

という姿勢が一貫したものとなっていました。

本来なら、橋下さんの様な人への判断はころころと変わってもいいのです。

橋下さんは解り難い人だったのですから。

タレントかと思いきや一生懸命に仕事をしていて、

しかし「移民受け入れ」という危険な政策に寛大そうで、

ただし簡単にイデオロギーにかぶれるタイプの人ではなく、

現実主義者である、

というふうに。

チャンネル桜の社長さんや在特会の会長さんは、悪い意味で一貫していました。

妙な人達がしている話に影響を受けたせいでしょう。

ＴＰＰの時にも、財政政策好きの人達と似た様な話をしていました。

ＴＰＰにしても大阪都構想にしても、不安を持つのはいいのです。

ただし、考え方が偏った経済評論家の話に影響を受けて不安を持つなら、反応はおかしなものになってきます。

辻本清美の話から集団的自衛権に不安を持つなら反応がおかしくなる様なものです。

私から見ると、在特会の会長さんなんかは、経済政策について辻本清美みたいになっている。

そして、おそらくそれを回避するのは困難だったはずです。

慎重に考えていてさえ経済評論家の話の中から「間違い」を見つけられないものだからです。

経済評論家の間違いに気がつく事は難しい