1 弁護士法

 弁護士法第1条には「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と書かれています。
 弁護士がよく口にする条文ですが,私はこの条文が好きではありません。

2 使命(ミッション)
 自分の使命,ミッションは自分で決めるべきであり,人から与えられるものではありません。
 企業では、それぞれ企業理念やミッションを定めた上で,公表しています。


 しかし,弁護士は使命について、ほとんど考えていません。それは弁護士法1条があるからです。何も考えずに条文を口にしている人が少なくありません。


 弁護士としての使命を考えに考え抜いて,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」にたどり着いたというのであれば問題ありませんが,多くの弁護士が「法律に書いてあるから私の使命はこれなんだろう」と考えています。

3 仕事との関係
 「基本的人権の擁護と社会正義の実現」は,弁護士が扱っている事件とどういう関係があるのでしょうか。相続や貸金請求事件を依頼された場合,どのような仕事をすることが基本的人権の擁護になり,社会正義を実現することになるのでしょうか。

 

4 依頼者はどう思うか
 また,弁護士から,「基本的人権の擁護と社会正義の実現が私の使命です」と言われて,依頼者はどう思うでしょうか。「私とどういう関係があるのですか。私が依頼した事件はあなたが使命としていることではないのですか。」そんな疑問を与えてしまいます。

5 社会正義とは
 「社会正義」という言葉は,危険な言葉です。これまで多くの戦争がありましたが,いずれも戦争を始めた理由は,「社会正義」です。社会正義などという言葉は中味がなく,どのようにでも解釈できてしまいます。こんな言葉を使いたくありません。

6 社会秩序の維持
 弁護士法1条には第2項があります。「弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」と書かれています。社会秩序の維持は大事ですが,弁護士が社会秩序の維持のために働くということには違和感があります。

7 事務所理念
 私の事務所では,「法的サービスの提供を通して社会を幸福にする」という事務所理念を掲げ,(1) 依頼者の幸せ,(2) 相手方の幸せ,(3) 関係するすべての人の幸せを実現することを使命としています。もちろん,その前提として事務所で働くすべてのスタッフが幸せにならなければなりません。

 

 事務所スタッフ一同,依頼者と相手方の双方に安心と納得を届けるために,できるだけ迅速に,また,円満な解決を目指して努力しています。


 弁護士に限らず,一人一人が自分の使命をしっかりと考えていくことが大切だと思います。