1 世界に誇る芸能

 落語は,日本の芸能の中でも特筆すべきものと思います。ハリウッド映画のような巨大なセットもなければ,俳優もいません。もちろんCGを使うこともありません。制作費0円です。

 落語家一人の言葉と表情,動作だけですが,聴衆一人一人の頭の中に具体的な場面が広がり,登場人物が動き出します。本当に不思議な芸能です。

 

2 話の間

 落語を聞いていると話し方の勉強になることが沢山あります。

 一つは,「間」が非常に重要だということです。0コンマ何秒という単位で調整されており,これが少しでもずれると,おもしろい話がまったくつまらないものとなります。

 落語ではありませんが,漫才やコントでも間が重要です。サンドイッチマンの二人の間は絶品だと思います。

 

3 繰り返し

 また,落語の中の会話で,わざわざ同じ会話を繰り返すことがあります。

 たとえば,上司と部下の間でこのような会話が行われます。

 

 上司「どうして遅刻したんだ」

 部下「寝坊してしまいまして」

 上司「何?」

 部下「はい,寝坊してしまいまして」

 

上司の「何?」と次の「はい,寝坊してしまいまして」は無くても会話としては成立しています。しかし,落語の中にはこういう繰り返しが時々でてきます。

日常会話でも,このように聞き直すことがありますので,何も聞き直しがなくて会話が進むよりも,かえって自然な会話の流れになります。

 また,少しスピードアップした場面などでは,繰り返すことによって聞き手の理解が助けられます。

 

4 パワーポイント

 最近の研修や講演では,パワーポイントがよく使われますが,次から次へとスライドが進んでいき,間を取るということもなく,また,繰り返しもなく,話を聞いていても,ついて行くだけで疲れるということがあります。

 落語に学びたいと思いますが,立川志の輔師匠の落語に学ぶところが多いと感じています。