OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める

 北野唯我著 ダイヤモンド社

 

1 事業戦略の無力化

 変化の激しい時代においては,事業戦略は無力化します。どんなに立派な長期計画を立てようとしても,来年がどうなっているかさえ分からない時代になったからです。

 

 重視すべきは「事業戦略」から「組織戦略」に移りました。変化を素早く察知し,変化に対応できる組織を構築していくことが大切なのです。

 

2 組織戦略とオープネス

 組織戦略で大切なのはオープネスであり,経営開放性,情報開放性,自己開示性と説明されます。

 

3 経営開放性

 経営開放性とは,経営側と現場の関係がどれだけオープンになっているかということです。具体的には,経営メンバーの名前と顔と考え方を現場のメンバーがどれだけ理解しているか,現場のメンバーの名前と顔を経営メンバーが理解しているか,経営陣は自分のバックグラウンド(過去の失敗体験や創業の背景など)をオープンにしているか,現場が経営陣に対してダイレクトに意見を述べる機会が年間に何回,何時間あるかなどです。

 

 成功体験はどれだけでも公開できますが,失敗体験は公開したくないのが普通です。しかし,成功しかない「無謬経営者」というキャラクターを目指すとかえって自分が辛くなります。「過ちが多い」ことを認めていく方が,自他共にプラスになると思います。

 

4 情報開放性

 情報開放性とは社内の情報に対するアクセスのしやすさであり,具体的に言うと,自分の業務を進める上で必要な情報に望めば誰でも簡単にアクセスできるか,経営陣からミッションの意図や目的を直接聞くことができるか,自分の意見を上司や他の部署に述べるとき公開された場所で行えるか,などです。

 

5 自己開示性

 自己開示性は,ありのままの自分の才能を表現しても他者から意図的な攻撃を受けないと思っているかということであり,具体的には,会合や議論の場で立場などに関係なく自由に自分の意見を言えると思っているか,自分にやりたいプロジェクトがあるときにその意思を表明できるか,ということです。

 

 私が思い出したのはGoogleが成果を上げるチームに必要だと言っている「心理的安全性」です。Googleは,「チームメンバーがリスクを取ることを安全だと感じ,お互いに対して弱い部分もさらけ出すことができる」と説明していますが,共通すると思います。

 

6 オープネスを邪魔しているもの

 筆者はオープネスを邪魔しているものとして,「ダブルバインド」を上げています。日本語で言うと,「二重拘束」ということになります。具体的には,上司から「自由に意見を言っていいよ」と言われたので,自分の意見を言ったところ,すぐに却下されたというようなケースです。

 「自由に言いなさい」という指示と「自由に言ってはならない」という矛盾した指示が同時に存在しているように感じ,部下は戸惑ってしまうのです。

 

7 行動のダブルバインド

 また,上司が「何でも相談して」とか「質問があったら,いつでも聞いてほしい」と言っているのに,朝から晩まで忙しく動き回っており,とても相談できる雰囲気ではないことがあります。これは行動によるダブルバインドです。

 

 私にとって非常に耳の痛いことであり,自分のことを言われていると思いました。口では「いつでもいいよ」と言っているのに,実際にそんな時間はどこにもないということです。

 

8 悪意のないダブルバインド

 ダブルバインドは多くの企業で起きていますが,そのほとんどが意図したものではないということです。無意識のうちに発する言葉や行動によって,部下を混乱させています。ダブルバインドは,結構沢山あると思います。ダブルバインドをなくして,組織のオープネスを向上させたいと思います。 

 

9 組織のライフサイクル

 商品にはライフサイクルがあります。新商品が売上を伸ばす時期,停滞する時期,再成長する時期あるいは市場から撤退するこもとあります。同じように組織にもライフサイクルがあると言います。成長する時期もあれば,停滞する時期,衰退する時期があります。組織が弱体化してきた時に,できるだけ少ない出血で乗り越える力が組織戦略力です。

 私も組織経営者の一人として,考えるところが沢山ありました。

 

 小堀評価 ★★☆