1 相談前の不安の解消   

 相談前の不安を解消するには,徹底した情報公開しかありません。弁護士がどんな人なのか分からないということが不安の原因です。

 

 昔は弁護士の広告は禁止されていましたが,今は自由になりました。事務所のホームページやブログなどで情報発信をすることができます。HPの内容は,できるだけ人柄が伝わるように,経歴や仕事に対する考え方などを詳しく書きます。

 

 また,弁護士やスタッフの画像,事務所内外の画像も多いほど安心感が増します。相談者は事務所に来られる前に,事務所HPをよく読んでおられるようです。実際に 事務所HPを印刷して持って来られる相談者もかなりの割合であります。

 

2 「飛び込み」という言い方

 昔は,紹介なしに来られる相談者を,「飛び込み」と言っていました。弁護士目線で使っている言葉ですが,相談者に対して大変失礼な言い方なので,私の事務所ではそのような言葉は使わないようにしています。

 

3 整理整頓

 事務所の掃除と整理整頓が非常に大事です。弁護士の仕事は法律関係の整理整頓,人間関係の整理整頓です。書類の整理整頓さえできない人が弁護士の仕事はできません。また,整理整頓されていない机を見ると,相談者や依頼者は一気に不安になってしまいます。

 

 書類の整理整頓と並んで大切なのが,情報の整理整頓です。弁護士が一人の場合は,利益相反などのチェックも頭の中で可能です。相談を受けている案件の相手方から相談の申込みがあったら,すぐに分かりますね。ところが,弁護士が複数になるとそうはいきません。他の弁護士がどんな相談や依頼を受けているのかはデータベースで管理しないと懲戒事由に該当する事態にもなります。

 

 外部の法律相談についても事前の相談者のチェック,事後のデータベースへの登録をしておく必要があります。私の事務所ではKintoneを使って,瞬時にチェックする体制を整えています。

 

4 植栽と花

 事務所に来られる方の心は潤いを失っていることが少なくありません。ちょっとした植栽や絵画が心をケアしてくれます。また,可能であれば,花を置きましょう。悩みを抱えた人は,花に癒やされます。

 

5 相談に際して

 相談室に入って弁護士の前に座った相談者は大変緊張しています。できるだけ緊張をほぐすように心がけます。弁護士がしかめっ面をしていると言いたいことも言えません。

 弁護士が話を聞くときは,相手を見てしっかりと頷くことが大事です。ある弁護士が相談中に不動の体勢だったので,「話を聞くときは,頷いた方がいいよ」とアドバイスをしました。すると,「頷いているつもりでした」と言われたことがあります。自分では頷いているつもりでも,相手に伝わらないと意味がありません。少し大きめに頷きましょう。

 

 相談者が最も知りたいことは,これからどうなっていくのかということです。できる限り丁寧に分かりやすく説明します。しかし,今後の見通しが不明確な場合も少なくありません。それでもいくつかのパターンや流れを想定して説明するとかなり安心されます。

 

 安心してもらいたいと思うあまり,甘い見通しばかり説明することは禁物です。後々,信頼関係が崩れてしまうおそれがあります。厳しい見通しと判断される場合には,相手の心情に配慮して,しっかりと伝えることが大切です。

 

6 分からないことはありませんか

 説明が終わったら,必ず,「分からないことはありませんか」と聞きます。そう言われても,何が分からないのかということが分かりません。その場合には,一般的に相談者が疑問に持つであろうことを,こちらから説明することが必要になります。

 

7 受任後の不安解消のために

 弁護士に依頼すると,依頼者には不安が一つ増えます。「依頼した弁護士はきちんと仕事をしてくれるだろうか」という不安です。

 

 委任を受けた事案は,できる限りまめに連絡や報告をしましょう。連絡がないと依頼者はどんどん不安になっていきます。相手方に送る書面や裁判所に提出する書面を作成したら、依頼者に送って事前に意見を聞きましょう。

 

 また,期日の後は,すぐに報告しましょう。詳しい報告書を作ろうとして時間がかかっていては意味がありません。簡単な報告でもよいので,早いことが一番です。今はメールがもっとも確実で早い方法です。

 

 また,ショートメールも便利です。自分が使っている携帯やスマホから送るのではなく,事務所のパソコンから送れるアプリがあります。事務所で契約して,弁護士やスタッフが自分のパソコンから依頼者と簡単なやりとりができます。

 

8 折り返しの電話をしましょう

 弁護士の留守中に依頼者から電話があり,「明日,もう一度電話します」という伝言が残されることがありますが,依頼者の本心は「電話してください」ということです。弁護士に対して電話してほしいと言える人はまれです。必ず,こちらから電話するようにしましょう。

 

9 予習と復習

 依頼者との打合せには,できる限り予習と復習をしましょう。事前に記録を確認して打合せの狙いを把握し,打ち合わせが終わったら,その内容を記録に残します。

 我々にとっては日常の仕事であっても,依頼者にとっては一生に一度のことであり,そのことをよく理解して対応することがなによりも大事です。

 

 一つ一つの小さなことの積み重ねで,信頼の山になるか不審の山になるかが変わってきます。私自身もすべてできているわけではありません。努力していきたいと思います。