1 読解力とは     

  文章を読んでその意味を正しく理解する力を読解力と言います。

  新井紀子著「AIに負けない子どもを育てる」から,読解力の大切さを学びました。

 

 大抵の人は,文章を読むことくらいはできていると思っています。しかし,案外と読めていないのです。もちろん日本語で書かれた文章ですから,文字を読むことはできるのですが,文章の意味を正しく理解できないということです。

 

 新井紀子氏は,読解力の測定ツールとして,リーディングスキルテストを考案しました。

 

2 例題(1)

 新井紀子氏が考案したリーディングスキルテストの例題を紹介します。

 (教育のための科学研究所HP https://www.s4e.jp/about-rstから引用)

 

 以下の文を読みなさい。

 

 Alexは男性にも女性にも使われる名前で,女性の名Alexandraの愛称であるが,男性の名Alexanderの愛称でもある。

 

 この文脈において,以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

 

 Alexandraの愛称は(   )である。

 

  ① Alex

  ② Alexander

  ③ 男性

  ④ 女性

 

 正解は①です。皆さんなら,すぐに分かると思います。

 ところが,全国の中学生の平均正答率は38%しかありません。高校生の平均正答率も65%です。

 

3 例題(2)

 

 以下の文を読みなさい。

 

 幕府は,1639年,ポルトガル人を追放し,大名には沿岸の警備を命じた。

 

 上記の文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。「同じである」「異なる」のうちから答えなさい。

 

 1639年,ポルトガル人は追放され,幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

 

   ① 同じである

   ② 異なる

 

  正解は②ですが,正答率は中学生で57%,高校生でも71%です。

  まったく反対の意味に理解しているのですね。

 

4 文字は読めても意味が読めない

 問題文の中に答えが書いてありますので,普通に考えれば間違えるわけがありません。どうして,こんな問題で間違えるのでしょうか。

 文字を読むことはできるけれども,文章の意味を読み取ることができないということが原因です。

 

 文章の意味が読み取れないということは非常に深刻なことです。

 学校の試験問題は,文章で書かれています。問題文の意味が正確に読み取れなければ,正しい答えが出せるわけがありません。

 

 これは,英語,数学,国語,理科,社会などすべての教科に共通することです。高校生のリーディングスキルテストとの成績とその高校の偏差値は,相関関係があります。つまり,読解力で試験の成績が決まるということなのです。

 

 読解力は社会に出てから更に重要になります。

 仕事では,社内マニュアル,上司からの指示書,部下からの報告書,顧客からの要望や苦情など,すべて文章で書かれています。それらの意味を正確に理解できないとなると,大変なことが起こります。実際に,沢山起きています。

 

5 自覚しましょう

 文章を読めない人が相当割合になります。自分は読めていないかもしれないと自覚することが大切です。読み飛ばしは禁物です。じっくりと落ち着いて読むようにしたいと思います。

 

 また,文章を書くときも,読めない人がいることを自覚しましょう。どうすれば,誤解のない,分かりやすい文章になるのか,工夫することが大切です。

 

6 聞く力

 読解力は聞く力にも通じると思います。相手が話している内容を正確に理解しないと会話が成り立ちません。文章の読解力が弱い人は,人の話の意味を正確に理解することが難しくなると思います。

 

 科学は進歩し,コミュニケーションツールは非常に増えましたが,「言ったはずだ」とか「聞いていない」,「そんな意味ではない」というトラブルが頻発しています。トラブルの原因の一つに読解力があるように思います。

 

7 受験します

 法律事務所の仕事でも,多くの文書を読んだり,書いたりします。読解力が非常に重要です。

 新井紀子氏が主催する教育のための科学研究所では,リーディングスキルテストを実施しており,今度,私の事務所のスタッフ全員が受験することにしました。

 

 読解力が不足していることが分かったら,努力して読解力を高めることができます。よりクオリティの高い仕事をするために必要なことと思います。

 皆さんも一度受験されたらどうでしょうか。