1 様々な事件       

弁護士が扱う事件は多種多様です。

その中から共通点のあるものをピックアップしてみました。

  • 離婚事件
  • 少年犯罪
  • 自己破産
  • 暴力団の抗争事件

2 共通点

これらの事件にはある共通点があるのですが,皆さんはどのように考えられますか。

共通するキーワードは,「居場所」です。

すべての人は居心地のよい場所を求めています。

しかし,なかなか居場所はありません。

 

3 家庭

結婚当初は,大抵家庭は居心地のよいものです。夫は早く家に帰って妻の顔を見たいと思いますし,妻は夫が早く帰ってこないかと待っています。

 

ところが,年月が経つと夫婦関係がギクシャクしていくケースがあります。夫婦喧嘩が頻繁に起こるようになると,家庭の居心地は悪くなります。夫はできるだけ家に帰りたくないと思います。

妻も夫と顔を合わせたくないと考えます。家庭が自分の居場所と感じられなくなるのです。

 

4 パチンコ

仕事が終わってもすぐに家に帰りたくないので,時間つぶしのためにパチンコへ行きます。パチンコは依存性の高いものですので,自分でもコントロールできなくなる場合があります。そうなると小遣いの範囲を超えてしまい,借金を重ね,やがて自己破産となってしまいます。

 

5 不倫

また,夫が妻以外の女性が魅力的に思え,その人と一緒だと居心地がよいと感じます。

妻にも同じようなことが起こりえます。

最初は自分の家庭が居場所でしたが,居場所が変わってしまうのです。そして,夫婦関係が破綻すると離婚となります。

 

5 少年事件

子どもにとっても,家庭は居心地のよいところです。ところが,両親から虐待を受けるとか,両親がいつも喧嘩をしているなどということがあると,居心地はよくありません。そんな家庭からはできるだけ離れていたいと思います。

 

暴走族に入ったりする少年がありますが,家庭よりも暴走族の方が居心地がよいからです。自分と同じような家庭環境の友達が多く,自分の居場所はここだと感じています。

家出や万引きなど,家庭に居場所がないことが背景にあります。

 

6 暴力団

全国の暴力団勢力は2万8200人とされています(2020年4月警察庁発表)。暴力団は,暴力や脅しによる組織であり,居心地が悪いと思われるかもしれませんが,暴力団組員は自分の居場所だと感じています。

 

社会に出て,色々な仕事に就きますが,うまくやっていけません。そして,最後,暴力団に行き着いたという人が大半ですが,そこに居心地の良さを感じています(もちろん,離脱したいのにできないという人もあります)。

 

居場所である暴力団組織の中で,評価され,承認されたいと思います。対立抗争事件で,組員が相手方組長を襲うということがありますが,背景にあるのは「居場所」です。

 

7 依存症

薬物依存症,アルコール依存症,買い物依存症,ゲーム依存症,SNS依存症など,様々な依存症が問題となっていますが,自分の居場所がないという背景事情があります。

 

ネットゲームの世界でヒーローになっている人,SNSでリア充を演じている人もあります。そこに居場所を見つけているのですね。

 

8 居場所

すべての人は居心地のよい場所,すなわち「居場所」を探しています。温かい家庭が居場所という人,仕事が楽しく会社が居場所と思っている人もあります。スポーツに没頭している人,カラオケ喫茶,趣味のサークル,政治の世界など,居場所は様々です。

 

居場所がいつまでも居場所のままであればよいのですが,大切な家族を突然失うこともあります。また,定年退職となれば,会社という居場所を失います。

 

永遠に続く居場所というものはありません。居場所を失ったとき,多くの人が動揺と混乱に襲われてしまいます。

 

自分にとっての居場所はどこか,その居場所はいつまであるのか,あらかじめよく考えておくことが必要だと思います。