【読書日記】 人類と気候の10万年史

  過去に何が起きたのか これから何が起こるのか

  中川毅著 講談社ブルーバックス

 

1 気候変動 

気候変動に関心が集まっています。

地球は温暖化を続けていて,様々な異常気象も引き起こしています。

これからの地球はどうなるのか,多くの人が心配をしています。

この本では,私たちに新たな視点を与えてくれます。

 

2 5億年前から現代まで

気候変動と言っても,どのスパンで切り取るかによって見え方がまるで変わってきます。

5億年前から今日までの気候変動の大きな流れを見ると,5億年前の温暖期が4億年前には氷期となり,一旦温暖となって,3億年前にはまた氷期を迎えます。その後,温暖期と氷期を経て1億年前に温暖期となり,以後は現代まで寒冷に向かっています。

 

1億年前は現代よりも気温は10度ほど高く,北極にも南極にも氷はありませんでした。この時代,地球上にまだ人間は出現していません。

 

3 500万年前から現代まで

500年前はかなり温暖でしたが,その後,気温の上下を繰り返しながらも,全体的な傾向としては,寒冷化が進んでいます。

この間,7度ほどは気温が下がってきています。

 

4 80万年前から現代まで

80万年前から現代までは,前述したとおり歴史の中では寒冷な時期なのですが,この期間は変動幅がかなり大きいのが特徴です。最大20度近い差があります。

 

10回以上も大きく氷期と温暖期を繰り返しています。20万年前にはホモサピエンスがアフリカで誕生していますが,その後も,海面の高さが100メートル以上変動するような事件が繰り返し発生し,我々の祖先を苦しめてきました。

 

5 8万年前から現代まで

8万年前から現代までを見ると,その中にやはり10回以上の温暖期と氷期が繰り返されています。

温暖期と氷期が繰り返されると言っても,温暖期と氷期は同じ長さではありません。

ほとんどが氷期であり,温暖期はほんの短い間です。ですから,温暖期を氷期と氷期の間という意味で「間氷期」と言われています。

 

地球の環境は,常に大きく変動しているのです。

「異常気象」という言葉は「正常気象」に対するものですが,歴史上,地球に「正常気象」などというものはありませんでした。

このように氷期と温暖期が繰り返される原因は,地球の公転軌道の周期的変化と自転軸の傾きの周期的変化などによるものと言われています(ミランコビッチ・サイクル)。

 

6 1万年前から今日まで

今から1万1600年前に最後の氷期が終わりました。まるでスイッチを切り替えたように,パチンと温暖期に入ったそうです。

そして,以後,歴史上まれな安定した温暖期が今日まで続いています。

 

なぜ温暖な気候が続くようになったのかということについて通説はありませんが,8000年前に人間が農耕や森林破壊を始めたことが原因であると主張する説もあるそうです。

 

7 次の氷期はいつ来るのか

過去3回の温暖期は長くても数千年しか持続していません(4回前は2万年続きました)。

そうすると1万1600年も続いている今の温暖期は,そろそろ終わりで,氷期に入るのではないかという心配が起きてきます。

 

実際に1940年から1970年にかけて,地球の気温は下がっていき,いよいよ氷期に入るのではという観測が広がりました。

しかし,その後,気温は上昇に転じて今日に至ります。おそらく人為的な温暖化と言えます。

 

8 未来の予測

もっとも恐ろしいのは現代の安定した暖かい時代が終わり,氷期に入ることです。それはいつか分かりません。

地球が氷期に入った場合,深刻な打撃を受けるのが農業です。おそらく,70億人もの生存を維持するだけの食料は得られません。

 

著者は,氷期が到来しても人類が生き残る可能性があると述べています。もちろんそうあってほしいと思います。

 

たとえ氷期を乗り越えたとしても,太陽の寿命が尽きる50億年後には,人間が地球で生きていくことはできません。その場合は,地球以外の世界に行くしかありませんが,どうしたらよいのでしょうね。

 

9 水月湖

この本では,過去の気候変動がかなり正確に書かれています。

どうして何万年も昔の気候変動が分かるのでしょうか。これは,福井県の若狭町にある水月湖に鍵があり,この本でも詳しく紹介されています。

 

実は,水月湖と私は深い関係があります。このことは次回に書きたいと思います。