1 スーダラ節    

 植木等が歌ったスーダラ節は,昭和を代表するヒット曲です(作詞:青島幸男)。

 「わかっちゃいるけどやめられない」というフレーズは,弁護士にも深い関係があります。弁護士が扱う事件やトラブルの多くは「わかっちゃいるけどやめられない」ことが原因です。

 

2 アルコール

先輩や同僚から,仕事帰りに「一杯行こう」と誘われると,なかなか断れません。

断れない一番大きな理由は,「一杯やりたい」という心があるからです。

お金に余裕がなくても,つい行ってしまいます。

 

ビール1本にしようと強く決意して飲むのですが,ついつい「もう1本」,「あと1本だけ」となって,前後の見境がなくなってしまいます。

スーダラ節に「ちょいと一杯のつもりで飲んで,いつの間にやら,ハシゴ酒,気がつきゃホームのベンチでごろ寝」とあるとおりです。

 

アルコール依存症は300万人と言われます。家庭や職場で問題を起こしたり,飲酒運転の事故もあります。周囲の人の理解と治療が必要です。

 

3 ギャンブル

検察官は,法律の専門家ですから,賭け麻雀が賭博罪という犯罪になることはよく分かっていますが,やっぱりやめられません。

 

パチンコ,競輪,競馬,競艇,カジノなど,頭ではやめようと思っていますが,どうしても足が向いてしまうのです。

スーダラ節では「ねらった大穴みごとにはずれ,頭カッと来て最終レース,気がつきゃボーナスはスッカラカンのカラカラ」と歌われています。

 

スッカラカンとなってもやめられないので,銀行や信販会社,サラ金のローンが増えていって,多重債務となってしまいます。

 

4 子どもの虐待

 児童虐待の多くは,「やってはいけない」と思いながら,やってしまうものです。イライラがつのり,つい子どもに手を出してしまいます。

しばらくすると自責の念にかられるのですが,また,何かきっかけがあると暴力を振るってしまうのです。

親を非難するのではなく,援助しなければなりません。

 

5 不貞行為

不貞は離婚原因ですから,家庭崩壊で配偶者や子どもたちに大変な迷惑をかけます。相手が既婚者であれば,その家庭を壊し,損害賠償が請求されます。浮気や不倫はいけないとみんな分かっていますが,やめられなくて様々なトラブルになっています。

 

6 タバコや過食

タバコが健康に悪いことは誰もが分かっていますが,なかなかやめられません。

また,食べ過ぎはよくないと分かっていますが,目の前にお菓子やジュースがあるとつい手が出てしまいます。

 

7 金儲け

ある程度金が儲かったら,それ以上儲けても生活水準は変わりませんし,幸福感も変わりません。1億円貯めた人が,更に頑張って2億円貯まったとしても喜びはほとんど増えないのです。そんなことは分かっているのですが,なぜか金を追い求めてしまいます。

 

長者番付に名前が上がっている人たちは,本当に苦しいだろうと思いますが,やめるわけにいかないのです。

 

9 出世

出世しても,責任が重くなるだけです。このことは自分の経験からもよく分かっているのですが,出世したいという心はなくなりません。

 

大臣になった途端に,マスコミによるあら探しが始まり,ひどい目に合います。内閣改造があるたびに必ず叩かれます。国会議員の先生方はそんなことは嫌というほど分かっているですが,やはり大臣になりたいと思います。悲しい人間の性(さが)ですね。

 

10 歴史秘話ヒストリア

先日のNHKのテレビ番組「歴史秘話ヒストリア」では,植木等さんが「スーダラ節」を歌いたくないと浄土真宗僧侶の父親に相談したところ,「この歌詞こそ,親鸞聖人の教えに通じる」と諭されたという話が紹介されていました。

 

そして,その親鸞聖人の教えは,「悪性さらにやめがたし 心は蛇蠍のごとくなり」という言葉であるという解説でした。悪いことをやめようとしても,やめることはできないのが人間です。

 

すべての人が,わかっちゃいるけどやめられないのです。私にもやめられないことがあります。みんなも私も,依存症の人や犯罪者と本質的にまったく同じなんですね。