1 美しさ

「法令遵守」から「美しさ」へ,コンプライアンスの基準が変わっています。

「消費者から見てその経営判断は美しく見えますか」という問いを投げかけてみることが必要です。

法令には違反していなくても,美しくない判断は沢山あります。

 

2 弁護士の指導

企業に何らかの不祥事が発生した際,経営者が弁護士にアドバイスを求めます。

「会社に法的な責任はありますか」と問われ,弁護士は法令や判例を調査して,法的な責任の有無を回答します。

 

また,「この問題を公表する義務はありますか」と問われた場合,公表を義務づける法令はほとんどありませんから,弁護士が「法的に公表する義務はありません」と回答することが多いと思います。

弁護士の指導がこのようなものに止まるとすれば,大変な大きな間違いです。

 

前回も書いたとおり,消費者は「法令に違反しているかどうか」という見方をしません。

「これは美しくない」と考えるとたちまちSNS上でバッシングが始まります。

 

法令に違反していなくとも謝罪や補償をすべきケースは確実にありますし,公表義務はなくても公表すべきこともあります。

企業としてどう行動することが美しいのか,弁護士は外部の目でアドバイスすることが必要です。

 

3 裁判とコンプライアンス

裁判では原告と被告の弁護士が,それぞれ言い分を主張しますが,ここにも大きな問題があります。

主張できることは何でも主張する,依頼者も落ち度を認めていて本来なら争点にならない事実なのに裁判では徹底的に争う,という弁護士がいます。

裁判官にとっても非常に迷惑です。

 

4 甚大なリスク

また,どう見ても「美しくない」主張をする弁護士があります。

たとえば,何の落ち度もないお客様からの請求に対し,裁判では徹底的に攻撃を繰り返します。

会社のホームページには「常にお客様第一主義を企業理念とします」とか 「お客様との約束は、どんなに些細な約束事であっても、これを軽視せず、誠実に履行し、信頼される企業を目指します」などと書いているのに,その矛盾に気づかないようです。

 

裁判は公開が原則ですが(憲法82条),多くの裁判では傍聴人もなく,その企業がどんな主張をしているのか世間に知られることはありません。

ですから,「裁判で何を主張しても,ばれることはないだろう」という考えなのでしょう。

しかし,上場企業の場合,そんな主張をしていることが世に知れたら,大変なダメージを受けることが明白です。

コンプライアンス上非常に大きなリスクとなりますが,平気で何でもかんでも主張する弁護士があるのです。

おそらく,SNSの怖さを知らないのでしょう。そして,その裁判の勝ち負けしか眼中にないのだと思います。

視野を広くして,依頼者の本質的な利益を守ることが必要です。コンプライアンス上,絶対に勝ってはいけない裁判もあります。

 

まず,弁護士が,コンプライアンスをよく学んで十分理解する必要があります。