1 倒産を招くコンプライアンス違反

企業経営にとってコンプライアンスは非常に重要です。

コンプライアンス違反により会社が倒産の危機に直面することがあります。

 

これは大企業であろうと中小企業であろうと関係ありません。

大企業の場合はマスコミで叩かれたり,SNSで不買運動が広がることもあります。

中小企業の場合は,入札指名から外されたりして,経営危機に陥ります。

 

コンプライアンス違反をした企業の倒産件数は年間200件を超えています(帝国データバンク)。

 

2 最近のコンプライアンス違反

コンプライアンス違反として問題となるケースには様々なものがあります。

 

最近の例では,かんぽ生命の不正販売,レオパレス21の違法建築,タレントの闇営業,関西電力の金品受領,長時間労働による過労死(NHK)や過労自殺(電通),自動車メーカーのデータ偽装,東芝の不正会計などです。

 

ニュースにはなりませんが,中小企業でもコンプライアンス違反により経営危機に至るケースが少なくありません。

 

3 法令遵守?

一般的にコンプライアンスは「法令遵守」と説明されています。

データ改ざんなどは明らかに法令に違反する行為です。

しかし,法令には違反しないけれども,大きな問題となることもあります。

 

4 関西電力

関西電力の金品受領問題は,「不正な行為をした見返りとして金品を受け取ったものではない」と関電は説明しています。

仮にそうであるとすると法令には違反していないということになりますが,消費者は「法令違反がないのなら問題ないね」とは考えません。

 

電気事業は公共インフラであり,特定の者から多額の金品を受領していることは,その事業の公正な運営に対する大きな疑いが生じます。

関電は消費者から電気料金を徴収し,原発関連の多くの工事を発注して,多額の工事代金を支払っています。

その工事代金の一部が特定の者のところへ渡り,その者から関電の幹部に還流しているというのが今回の構図です。

関電幹部に渡った金品音総額は3億6000万円に上ります。

 

国税局の調査をきっかけとして,平成30年6月に関西電力は社内調査委員会を設け,同年9月に報告書が作成されました。しかし,この問題を関西電力は公表しませんでした。

公表すべき法的義務はないからコンプライアンス上も問題ないと判断したのでしょう。

 

ところが,1年後の令和元年9月にこの問題がマスコミ報道され,関西電力はこの問題を公表します。

金品受領問題も大きな問題ですが,これを公表しなかった会社の隠蔽体質にも批判が集まりました。

 

5 美しさ

関電の行為は厳密に言えば法令に違反していないかもしれませんが,社会には到底受け入れられません。

 

そうするとコンプライアンスは,単に「法令遵守」と理解するのではなく,「企業が誠実に事業運営を行うこと」と理解すべきです。

 

更に,誠実か不誠実かは,消費者や一般市民が見て判断しますので,企業の行動が「美しい」と見えるか「美しくない」と見えるかという問題に行き着きます。

 

「美しいか否か」,これが最新の「コンプライアンス」基準です。

 

また,コンプライアンスの視点で,現在の裁判を見るとリスク満載です。

これは明日にしたいと思います。