1 弁護士会の報酬規程
かつては法律で弁護士会が報酬規程を定めることとされていました。
弁護士以外の士業でも同じようにされていたのですが,価格カルテルだという批判があり,平成16年に報酬規程は廃止されました。
2 報酬自由化
その後,各弁護士が自由に報酬の基準を決めることができるようになり,着手金無料という完全成功報酬制の法律事務所も見られるようになりました。
しかし,多くの事務所ではかつて弁護士会が決めていた報酬規程をそのまま使っているようです。
3 報酬の計算式
一般的な金銭請求の事件では,請求額を基準にして着手金や報酬金が計算されます。
旧規程では,裁判で支払いを請求する場合,以下のような計算式となっていました(抜粋)。
着手金(最低10万円)
300万円以下の場合 8%
300万円~3000万円 5%+9 万円
報酬金
300 万円以下の場合 16%
300万円~3000万円 10%+18 万円
4 100万円の売掛金を請求
裁判で100万円の売掛金を請求して100万円を回収できたケースでは,着手金は10万円,報酬金は16万円となります。
これ以外にも印紙代や切手代を裁判所に納めますから,消費税も加えると合計30万円ほどになります。
多くの経営者が懸念することは,それだけの費用をかけても回収できたらよいけれども,まったく回収できなかったら,着手金と実費で20万円近くが丸々損となってしまうことです。
5 解決困難な事件とそうでない事件
売掛金を請求すると言っても,色々あります。
納めた商品に不具合があったと言って支払いを拒否しているケースと,ただ単に資金繰りが厳しいと言って先延ばししているケースでは,まったく違います。
弁護士の報酬規程は前者を念頭に置き,1年以上かけて裁判することを前提に作られています。
弁護士からすると報酬は30万円でも低すぎるというのが正直な感覚だと思います。
6 多くの事件
しかし,実際には商品不具合などで支払義務を争う事件よりも,資金繰りが苦しいから支払わないという事件が圧倒的に多いのです。
残念ながら,報酬規程はそのような事件に対応していません
7 内容証明郵便
一般的に売掛金回収の相談があると,弁護士はまず内容証明郵便で催促します。
内容証明作成の手数料は4万円です。しかし,内容証明を送るだけで支払ってくるケースはほとんどありません。
結局,訴訟を検討する必要が出てきます。
多くの弁護士の報酬規程では,訴訟の着手金として10万円+実費となります。
前述したとおり,費用倒れのリスクがあって,多くの経営者は躊躇してしまいます。
8 新方式
私の事務所では売掛金の額が140万円以下で,支払義務に争いがない場合は,着手金5万円ですぐ訴訟をすることにしています。
内容証明郵便は効果がないので送りません。
そして,回収できた金額の20%を報酬金としています。こうすれば,費用倒れのリスクはかなり小さくなります。
100万円を請求して100万円回収できれば,弁護士報酬は合計25万円,まったく回収できなければ5万円で済みます。
9 自利利他
実際に訴訟を提起した例では,訴状が相手方に届いた段階ですぐに全額を支払ってくるケースが半数以上です。本当は支払うことができたのに先延ばししていたんですね。
また,初回の裁判期日に分割支払いの和解ができるケースが相当割合あり,何も回収できなかったというケースはほとんどありません。
リスクが少なく早く回収できることから皆さんに大変好評であり,弁護士にとっても短時間で解決できることから,自利利他となります。
これ以外にもニーズに合っていない部分があると思いますので,ご意見を聞いて改めていきたいと思います。