1 色々な依存症
これまでに紹介した以外にも色々な依存症があります。
タバコがやめられないニコチン依存症(1300万人),食べることが我慢できない食べ物依存症(肥満症,2300万人),恋愛依存症,性依存症,仕事依存症などです。
2 依存症の仕組み
依存症の仕組みについては何度も説明してきました。
特定の物質を摂取したり,自分の行動によって,脳内にドーパミンなどの快感物質が放出され,幸福感を獲得します。
しかし,その快感は長続きせず,やがて喪失感がやってくるため,再び快感を得ようとします。
この快感と喪失感を繰り返して進行していくのが依存症です。
3 快感を求めて
私たちは,この「快感」というものが大好きで,「快感」を求めて生きています。
趣味は「快感」を与えてくれます。
スポーツをすること,スポーツを観戦すること,どちらも快感です。
スポーツの録画番組は面白くありませんね。それは結果が分かっているからです。
ギャンブルと同じで,ハラハラドキドキが楽しいのです。
しかし,試合が終わってしばらく経つと快感は失われてしまいます。
また,次の試合を見ようとします。
快感と喪失を繰り返すのです。
映画,ドラマ,読書も,間違いなく脳内に快感物質が放出されます。
これも快感と喪失の繰り返しです。
仕事もそうですね。自分の能力や成果を認めてもらい,報酬を得ることは快感です。
どうして,ボランティアに行くのでしょうか。
お金はもらえなくても,無償の活動に対する感謝や評価をもらうと快感だからです。
4 クレーマー
会社からクレーマーの相談を受けることがあります。
クレーマーはその人なりの正義感に基づいて攻撃しています。
「我に正義あり」という信念に基づいて攻撃すると,脳内に大量の快感物質が放出されます。
攻撃しているときは快感ですが,それをやめると喪失感が訪れますので,攻撃を繰り返すことになるのです。
この種のクレーマーが,「なるほど分かりました」と納得して攻撃をやめることはありません。
我々は意識していませんが,すべては快感物質を求めての行動です。
4 政治的な活動も
総理大臣がAという政策を決定します。
どうしてBではなくAなのか。
簡単な因果関係ではありませんが,利害関係者の脳内快感物質が関係していると思います。
野党が政府の政策に反対します。
そこにも脳内の快感物質が関係しています。
政府の政策に反対してデモ行進をします。
強い正義感に基づいて,不正義を糾弾することは非常に気持がよいことであり,快感物質と無関係ではありません
よく問題にされるヘイトスピーチも,快感物質が深く関係しています。
このような政治活動であっても,快感と喪失を繰り返しているのです。
5 私自身も
私は今ブログを書いています。
ハッキリと自覚しているわけではありませんが,快感物質を求めての行動にちがいありません。
また,朝起きてから夜寝るまでの間に,色々な行動をしていますし,色々な選択もしています。
それらのすべてに快感物質が影響しています。
私がブログに書いてきた様々な信条や行動も,快感物質と無関係なものはありません。
6 支配
人間のすべての行動は脳内の快感物質が影響しているのではないでしょうか。
私たちは快感物質に支配されていると言ってよいかもしれません。
生まれてから死ぬまで,私たちは,自分で善悪を判断し,より適切な行動を選択しているつもりです。
しかし,実際には脳内の快感物質の多寡により行動は決定されています。
何を快感と感ずるかは人によって異なりますから,行動も千差万別です。
しかし,根本的な仕組みは同じです。
そして,得られた快感はやがて失われ,また,快感を求める,また失われて求める,この繰り返しで一生が過ぎていくのではないでしょうか。
7 煩悩
科学的には「脳内快感物質」とされていますが,古くから「煩悩」と言われているものと深い関係があると思います。
昔から仏教では,「煩悩」が人間の本質,実態であると言われてきました。
欲や怒り,恨みや妬みなどの心です。
「煩悩」によって,求めて笑い,失って苦しんでいるのが人間であると言われます。
歎異鈔では,すべての人間を,「煩悩具足の凡夫」と言われています。
これからも探求していきたいと思います。