1 ブログを始めようと思った理由
 1988年に弁護士登録をして32年が経過しました。とても楽しい弁護士生活を送ってきましたが,平成30年には弁護士会会長に就任し,業界が抱える多くの問題にも直面しました。これまでの弁護士生活で学んだことで,未来ある若手弁護士に伝えておきたいことが沢山あります。若手弁護士は法科大学院や司法修習生として研修を受けていますが,そこでは学べないことをこのブログの中で伝えていこうと思います。
 主として若手弁護士向けのブログですが,一般の方が読まれても理解できるように、可能な限り難しい専門用語は使わないようにする予定です。
2  書きたいこと
 弁護士として大切なこと,弁護士としてのあり方,多少技術的なことにも触れますが,考え方をメインにする予定です。また,自分は改革派弁護士(?)だと思っており,かなりビジネス的な内容も含まれると思います。私の先輩方が読まれた場合には違和感をもたれるかもしれませんが,どうかご容赦ください。また,時には,読書日記や生き方について感じたことなども書きたいと思っています。
3 あり方とは
 「弁護士のあり方」というと,多くの弁護士は,判で押したように「弁護士の使命は基本的人権の擁護と社会正義の実現である」と言います。それは弁護士法1条にそう書いてあるからです。しかし,そもそも使命というのは他人から与えられるものではありません。一人一人の弁護士が自分で考えて自分で決めるものです。徹底的に考え抜いた末に「基本的人権の擁護」に行き着いたのであれば,それはそれで素晴らしいことですし,実際にそういう人もあると思います。
 弁護士法1条を無批判に受け入れるのではなく,自分は何をミッションにするのか,是非とも真剣に考えてほしいと思っています。
 
(以下は余談)
(1) 弁護士法の成り立ち
 昭和20年に日本が敗戦し,新しい憲法が昭和21年11月にできあがって,昭和22年5月に施行されることになりました。裁判所法と検察庁法は憲法施行前の4月に成立していますが,弁護士法はできていません。この当時,憲法77条が「最高裁判所は,訴訟に関する手続,弁護士,裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について,規則を定める権限を有する。」と定めるとおり,裁判所が弁護士規則を制定して,弁護士を監督下に置くという考え方が主流でした。
(2) 議員立法
 それに対し,当時の弁護士が反発し,議員立法として作り上げたのが現在の弁護士法です。GHQとの交渉,国会議員への働きかけが功を奏して,昭和24年に弁護士法が成立し,その年の9月から施行されました。このような経過であることから,裁判所法や検察庁法と比べても,その形式や内容がまったく異なっており,その象徴が弁護士法1条なのです。
(3) 弁護士法1条2項
ところで,あまり注目されていないのが弁護士法1条2項です。弁護士は社会秩序の維持に努力しなければならないとされています。「基本的人権の擁護と社会正義の実現」だけならともかく,これに「社会秩序の維持」が加わるとイメージが大きく変わります。「社会秩序の維持」のために弁護士が努力するというのは今日からは想像できませんが,当時の弁護士の地位を前提とするとやむを得ないことだったのでしょう。
 弁護士法1条を金科玉条のように考えている人も少なくありませんが,そうなると社会秩序の維持に努力しなければならないことになってしまいます。「社会秩序」とは何なのか,誰が決めるのかなど,困難な問題に直面することとなります。

 やはり,使命,ミッションというものは,自分が徹底的に考えるものなのです。