8合目くらいになると、岩場も多くなってきて

急勾配の箇所も増えてきた。

なんだろう・・・・

徐々に体重を感じるようになる。

足取りも重くなるあせ


足裏の痛みも少しずつ強くなる。

偏平足用のインソールを入れていたが

それでも、慣れていないと、逆にその部分が押さえられて痛いはっ


呼吸は休めば落ち着くが、私の足裏の痛みは加速する。

休憩の回数も増えていく。

「あの岩まで行ったら休もう!」

「あそこを曲がったら休憩しよう!」

4人で声を掛け合って、次の目標を定めては進んでいく。

もうだめだ、と思っても、あそこまで、、次はあそこまで、、、

小刻みに休んでは、また歩き出す。


そして、この頃になると

お互いがお互いを案じるようになる。

とくにRUKAは、みんなの顔色を常に見てくれていた。

「お母さん、大丈夫?」

RUKI、ゆっくり大きくお腹から息を吸って!」

RUKIはもともと、喘息をもっているし

高山病にかかった過去があるので、とにかく用心した。


「そろそろ、酸素を吸っておこう!」と旦那が言った。

携帯用の酸素をザックから取り出し

全員が酸素の補給をした。


9合目の山小屋にたどり着いたとき

眼下を見下ろすと、その壮大なパノラマにしばし見とれた。

正面に駿河湾、その左手に伊豆半島の全景、

その脇に伊豆大島、その向こうには江ノ島、三浦半島、

東京湾を挟んで、房総半島まで見渡せた!!!

やっぱり、富士山はすごいや、

海が見える富士宮口にしてよかった、

旦那が天候にこだわった意味がわかった。


その直後、RUKI異変に気づいた。


唇が紫っぽく変色している。

本人に聞くと、ぜんぜん平気!どこも痛くない!と言う。

でもわかっていた、母だもの・・・私にはわかる。

しんどいまではいかなくても、

なんらかの体の変調を感じているはず。

でも、3年前にやむなく下山したのは、この場所だえーん

本人は、今回絶対にリベンジするんだ!という強い思いがある。

とりあえずは、大丈夫という本人の言葉を信じ、

思いを尊重して見守ることにした。


9合目を出発する。

見上げると、頂上がもう目前に迫っているように見えるが

じつはここからが、さらに険しい道のりだった。


少し歩くと、9.5合目まで『あと200メートル』という

案内板があった。

200メートルといえば、学校のグランド一周だ。

ふつうに歩けば、2分くらいかな・・・・

この頃には足もピークにきていて

そのわずか200メートルで3回も休憩して

たどり着くのに20分もかかってしまった。

それほど山道は、体力の落ちてきた体にはキツイえーん


9.5合目の山小屋にさしかかったとき

RUKIが「頭が痛いから、酸素を吸いながら歩いてもいい?」

と聞いてきた。

やっぱりそうか、高山病がRUKIをジワジワ襲っていく痛い

「荷物を持とうか?」と尋ねると

「いや、大丈夫!これくらい大丈夫だよ!」

弱音は吐かず、自らの力でなんとか乗り越えようとしている。

私と旦那は、RUKIの思いに、大きく頷いた。


9.5合目を過ぎると、10合目まではあともうひと踏ん張りだ。

でも、歩いても歩いても、なかなか先に進まない。

太ももが持ち上がらない。

足の裏も限界まできている感じ。


そのとき、RUKIが言った。

「頭が痛いから、とにかく早く頂上まで登って早く下山したい!」

そこで、1番元気なRUKAと、頭痛に耐えているRUKI

2人で先に行かせることにした。

「あともう少しだから、姉弟で一緒に登ってこい!

 お父さんとお母さんは、あとから行くから。」


若者のエネルギーというものは、ものすごく強靭だ。

時折、こちらを振り返りつつも、2人は瞬く間に見えなくなった。

後ろを振り返り、私たちの居場所を確認しては

また前に歩き出す2人を見ていたら・・・・

ふと、思った。


こんなふうに、子供たちは

親を乗り越えていくものかもしれない。

こんなふうに、親のもとから

羽ばたいていくものなのかもしれない。


見上げると、2人はもう10合目にたどり着き、手を振っている。

あああ、良かった、無事に登頂できたようだ泣


いや、待てよ、RUKAがこちらに向かって何かを叫んでいる。

・・・・・が、聞こえない。

すると、RUKAが走って下りてきた。

「お父さん、RUKIが頭痛薬を飲みたいって言ってる。

 飲ませるから、早く出して!!」


ここで、ひとつ説明しておきますね。

私もじつは知らなかったことなんですが

10合目がてっきり頂上だとばかり思っていたんだけど

富士山の最高峰は、剣が峰という場所らしい。

登山道を登りきった10合目は、火口の外周であり

外周に立てば登頂したことになるが

最高標高地点(3776m)は剣が峰であり

この剣が峰に行くには、さらに歩かなければならない。


RUKIの状態がよくない、

10合目までは登ったものの

剣が峰は、あきらめなくてはいけないかもな・・・・っ!!




【その④感動のフィナーレ(後編) につづく】