2012年4月21日に開催した結成総会の「経過報告」 粟生線の問題点を整理して報告しました | 神戸電鉄「粟生線の会」のブログ

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神戸電鉄粟生線の存続を求めて活動している沿線住民有志の会の「神鉄粟生線を残して」の発信を行っています。

2012年4月21日に開催した結成総会の「経過報告」です。

経過報告
       2012年4月21日

はじめに


2010年11月27日、神戸新聞で「神戸電鉄粟生線存廃判断へ」との報道は、私たち沿線住民に大きな驚きと不安を与えました。

神戸電鉄粟生線は、通勤、通学、通院、買い物など、住民に欠かせない足であり、「廃線」は考えられません。なんとしても存続させ、住民にとってもっと便利に快適に使える公共交通手段として充実させなければなりません。

自治体や神戸電鉄に、住民代表も加わった「神戸電鉄粟生線活性化協議会」も設置され、〝粟生線の危機〟へ、関係者の努力が行われており、兵庫県も1012年2月8日の新聞報道によると、「40億円を5年間無利子で貸し付ける」「ただし神鉄の更なる人員削減などが条件」とのことです。この「住民の足の危機」に、私たち住民としても積極的にかかわって乗り越えるべきだと考えて、このたび「公共交通・神戸電鉄粟生線/沿線住民の足を守る会」(仮称)の設立を提起しました。

 

廃線の検討表明にいたる経過と支援策

神戸電鉄粟生線の運営主体は神戸電鉄株式会社であり、昭和11年から敷設がはじまり、用地取得等への住民協力も得て、昭和27年に鈴蘭台駅から粟生駅までの全線の営業が行われ、神戸市北区、西区、三木市、小野市の大切な住民の足となり、神戸電鉄有馬線を通じて神戸市内へ、また、JR加古川線を通じて広く北播磨の足ともなっています。

 現在、粟生線では全列車でワンマン運転が実施され、ほぼ全列車が有馬線に乗り入れ新開地駅への直通運転。一時間4本程度、朝夕の時間帯には快速、急行、準急が運行されています。運賃は初乗り170円(小人90円)、新開地駅から押部谷駅まで620円(小人320円)、所要時間は急行でも約31分です。

 

今回の2011年度中に廃線も検討と表明した原因は、年間の赤字10億円以上が10年以上続いていること、「粟生線活性化協議会」を発足させ、国の補助事業で10年度から3カ年で4億円の利用促進事業の認定がされましたが、民主党政権下の国土交通省「事業仕分け」でこの事業への国の支援が中途打ち切りとなり、経営の改善が難しいことを「廃線検討」の理由にしています

赤字の要因として神戸電鉄があげているのは、「粟生線は急勾配・曲線区間が多く、防災設備や車輌などの運転保安設備に多額の資金を投入する必要がある」こと「構造的な少子・高齢化や雇用情勢の悪化等による鉄道利用者の減少が続く厳しい状況」にあることです。阪神淡路大震災では長期にわたって運休し、利用者が神戸市営地下鉄に流れ、復旧後も戻らなかったと聞いております。

神鉄は、支援策に一案として、自治体が鉄道施設を買い取る「上下分離方式」案を提示(総額68億円)しましたが、財政難の中受け入れは難しいといわれています。

神鉄と兵庫県、神戸市、三木市、小野市と、北播磨の3市1町の首長らは、2011年7月に「粟生線存続戦略会議」を発足させ検討が続けられ、兵庫県も井戸知事が2012年1月31日の定例記者会見で神戸電鉄の支援について「今週中に、来年度予算の中で最終結論をだす」と表明、関係自治体と協調しての「無利子貸付」の支援となりました。

また、三木市と小野市は2011年10月に、計1億円の支援を、筆頭株主の阪急阪神ホールディングスや県の支援を条件にして表明しています。

神戸市は、12月の議会で、山本企画調整局長が「神鉄にさらなる支援はできない」「粟生線が廃線になるとは聞いていない。粟生線は残す」と、議員の質問に答えています。

このたびの兵庫県の〝40億円無利子貸付5年間〟の支援で、当面の廃線の危機は回避することができるといわれておりますが、この間を利用して是非事態の根本的改善できるようにしなければならないのではないでしょうか。

 

粟生線存続の自治体、神鉄のとりくみと問題点

神戸電鉄粟生線活性化協議会は、関係自治体と、神鉄、沿線住民代表、学識経験者で設立、粟生線の活性化・利用促進に向けてさまざまな取り組みを行い、2012年2月19日に「活性化シンポジウム」を行いました。他の鉄道存続運動の活動家や、学識経験者、住民代表、神鉄、自治体関係者などがパネリストとして熱のこもった発言がありましたが、一方では、参加者やネットできびしい批判もあがっています。シンポ開催前に「リハーサル」が行政主導で行われたこと、神鉄がいっそうの合理化の一つとして駅のトイレを撤去しようとしていることなどへの批判です。

神鉄を真に住民に愛される公共交通とするためには、これらの批判に真正面からこたえなければならないのではないでしょうか。そのカギになるのはもっと幅広い住民参加を勝ち取ることではないでしょうか。現活性化協議会へ参加されている住民代表は、シンポでも積極的役割を果たされておりますが、地域的に、北区の住民代表が参加できていないこと、活性化協議会でもシンポジウムでも傍聴者からの発言の機会が与えられなかったことなど、行政主導の進め方の限界が見えているのではないでしょうか。

この際、この協議会の主役を住民代表に置く思い切った住民参加を行うべきではないでしょうか。それでこそ活性化協議会が神鉄粟生線存続でその役割を果たせる道ではないでしょうか。

また、2012年3月19日付で発表した、「ダイヤ変更」の主なものは、①昼間時間帯の急行列車の新設、②昼間時間帯の運行(小野~志染間)を、1時間4本から2~1本に、③最終列車の繰り上げ―15~31分などとしています。これらの変更も、サービス低下の部分は、利用者の要求、便利で利用しやすい公共交通を望む声との関係で、多くの問題点があるとの声も上がっています。

 

住民のとりくみ

沿線住民の動きでは、三木市内の自由が丘自治会などで独自にアンケート活動がとりくまれ、北区では「乗って残そう神鉄粟生線・北区連絡会」を中心に「神鉄にも敬老パス、福祉パスが使えるようにしてほしい」との請願が5000筆をこえる署名を集めて神戸市議会に提出されました。神戸市婦人協議会の北区での神戸市との懇談会でも、「敬老優待乗車証を神戸電鉄にもパスを神鉄にも」の要望が出されています。

三木市でも小野市でも、「住民の会」がつくられ、三木市の「会」は全国に発信しています。

政党の動きでは掌握できている範囲では、民主党の高橋昭一衆院議員が、11年7月活性化協議会と国土交通省へ要請行動などされております。

日本共産党は、桜が丘支部や押部谷支部がアンケート活動を行い、その結果をチラシにして住民に知らせ、神戸電鉄にも伝えています。また、11年6月議会には、「敬老パスを神鉄にも適用してほしい」との陳情を行い、陳述をしています。

 

廃線表明の背景とその影響

今回の「廃線」表明の背景は、政府による「規制緩和」があり、事業の廃止が「許可制」から「届出制」になり、全国でも赤字を理由に事業廃止が相次いでいます。そしていくつかの廃線になった鉄道では代替のバス運送がひどい渋滞を引き起こし、自治体出資の第3セクターによる運行など、廃線の危機を、住民の参加と、自治体や事業者、全国からの支援などで活性化を成功させた例も出ています。(和歌山県貴志川線、千葉県銚子鉄道、福井県えちぜん鉄道、三重県三岐鉄道北勢線など)粟生線でもいまの輸送量はバスによる代替は不可能というのが明らかで、全国の活性化を成功させている例をしっかりと学んで取り組むべきではないでしょうか。

また、神鉄は、赤字の内容について、その実態をしっかりと住民に納得が得られるように説明していただく必要があります。市民のための予算から一企業である神鉄に支出するからには、市民の納得抜きではできないことは明白です。

支援もやり方も、単に神鉄を助けるためだけでなく、まず、利用者・住民の利益・利便を考えるやり方で乗客を増やし、結果として神鉄支援につながるやり方が一番ではないでしょうか。たとえば「敬老・福祉優待券」を神鉄にも適用するやり方などが考えられます。

アンケートなどでは、運賃を高くしても、電車の本数を減らしても、サービスを低下させても残してほしいとの意見も多数ありますが、そうではなく、まったく逆に料金を抑え、複線化も行い、スピードアップさせ、地下鉄などとの連係も強めて、サービスも向上させて快適な足となってこそ、真に愛される「粟生線」になるのではないでしょうか。

神鉄にも住民としてしっかりと要請し、自治体も住民の足を守ることにさらにしっかり取り組んでいただくよう求めて、また、住民も強い関心を持って粟生線を見守り、応援しなければならないのではないでしょうか。