佐伯先生が帰り際に、
「城田、ラインをしっかり見とけ」といい残した。
燕尾服のカットやけど、燕尾服でない難解なご注文を頂いたやつだ。
佐伯先生が頭を悩ませながら「ああでもない、こうでもない」と言って今日引いていた。
紛れもなく日本最高峰のテーラーが燕尾服の製図の本を見ながら製図を引いているところは、僕にとって不思議な感じがした。
そしてこれがその製図だ。

僕のようなぺーぺーには正直全然わからないけど、ラインの一つ一つがミリの単位で考え抜かれ、立体になった時の仕上がりが明確にイメージされていることくらいは分かる。
きっとF1とかで走っている車の通るラインと一緒で、たくさんあるように見えて、でも実は通っていいラインは一つしかないんだろうなと思う。
F1は速さを求めて一本のラインに到達する。
僕たちは美しさと着やすさを求めて、一本のラインを引く。
目指すところは同じ、最高を求めるんだ。