遺言書の話は長くなりそうなので、いくつかに分けて書いていきたいと思います

 

今回は、比較的新しい制度である法務局の遺言書保管制度についてです

 

法務局の自筆証書遺言書保管制度は、法務局で自筆証書遺言を保管してもらうことができる制度です。

個人的には、公正証書遺言と自筆証書遺言の隙間的な制度だと思っています。

 

自筆証書遺言は自分で書いた遺言書を自分で保管しておくことになりますので、下記のようなデメリットがあります。

 

①    内容を勝手に見られたり、改ざんされる恐れがある

②    遺言書を紛失してしまったり、意図せず破棄してしまったりする恐れがある

③    遺言書の存在を相続人が知らなかったり、見つけることができず相続手続き時に使えない

④    相続発生時において、開封前に裁判所にて検認の手続きをしなければならない

(検認手続きをせずに開封すると五万円以下の過料がかされます。また、開封しているため他の相続人から改ざんを疑われたりと争いの種になってしまうことも。

自筆証書遺言を発見したら、くれぐれも開封せずに裁判所にて検認を受けましょう。なお、遺言が無効になるわけではありません。)

 

こういったデメリットを回避するため自分で書いた遺言書を法務局に保管してもらう制度が自筆証書遺言書保管制度です。

 

法務局で遺言書を保管してもらえば、上記の①~④のようなデメリットは防ぐことができます。

 

しかし、法務局の遺言書保管制度は、民法上の形式的要件に加えて、細かな様式にのっとって遺言書を作成しなければなりません(法務局における遺言書の保管等に関する省令別記第1号様式)

 

用紙はA4サイズのみで、記載した文字が読みづらくなるような模様や彩色がないものを使用します。

遺言内容は財産目録含め片面のみに記載します。

 

さらに、余白を必ず設けます。

最低限,上部5ミリメートル,下部10ミリメートル,左20ミリメートル,右5ミリメートルの余白をそれぞれ確保しなければならず、足りないと書き直しです。

また、各ページの余白内にページ番号をふり、総ページ数も分かるように記載します。

この全ての要件と様式を満たしたうえで、手数料を支払って法務局に保管してもらいます。

 

しかし、これでも万全ではないのです。

 

法務局はあくまで形式的要件と上記の様式に合致しているかのみ審査して保管をするので、内容については一切確認しません。

 

これは実際にあった話なのですが、法務局で保管された遺言書の財産目録の中で土地の所在、地番の記載が不十分であったために不動産登記に使用することができませんでした。

 

せっかく保管制度を使っていたのに、遺言書の記載内容が不十分なため相続手続きに使用できなかったのです。

 

こうしたことから、私は、手数料はかかるけれど内容はきちんと確認してチェックしてもらう、

さらに保管も厳重に行われる公正証書遺言の作成と利用をお勧めしているのです。