ホンダは2月14日、北海道にあるテストコースの鷹栖プルービンググラウンドで来月発表予定の軽スポーツカー『S660』を報道陣に公開した。
この日、会場にはS660の開発責任者は姿を見せなかったが、開発責任者代行を務める本田技術研究所四輪R&Dセンターの安積悟主任研究員は「S660の開発責任者は非常に若くて、今26歳。開発スタッフも若手ばかりで平均年齢は30歳代」と明かす。
26歳という若い開発責任者が誕生した経緯を開発部門のトップ、本田技術研究所の山本芳春社長に聞いたところ、「あの車のもともとのスタートは、研究所50周年記念のイベントで従業員にアイデアを募集したところ、『ゆるスポ』という提案があって、それが従業員投票で一番になった。それを提案したのが彼だった。一番の褒美として試作車を造ってもらって、本来ならそれで終わるつもりだった」というエピソードを披露。
ところが「ホンダの株主総会で株主様からの要請に伊東孝紳社長が『軽スポーツを造る』と答えたことがきっかけになって、本気で造ることになった。軽スポーツを造るにあたって、もともと『ゆるスポ』という提案があったのだから、それなら彼にやってもらおうと、かなりシンプルに決めた」ということだった。
もちろん開発スタッフの中にはベテランも加わっており、48歳の安積さんもその1人で「いろんな調整業務とか、難しいお金の話とかいっぱいあるので、それは全部私がバックアップしている。コンセプトだとか、思いといったところは若い彼らにどんどんやってもらった」と語る。
またシャーシー開発を手がけた深見政和主任研究員は「年寄りはシャーシー系の私と、エンジニアリング系、そして開発責任者代行の3人。この3人が平均年齢を上げている」とした上で、「自分も若いころに経験したが、やはり年配の人から言われると、自分で考えたのになんでという気持ちになる。だから、とにかく彼らに好きなようにやらせてあげられる環境づくりが我々3人の役目だった」と振り返る。
その一方で、「経験したからわかるということがある。今回オープンカーを造るにあたって若手からは『髪の毛が乱れるのでは』とか、『寒いんじゃないの』という声が上がった。我々はすでに経験しているので、そうじゃない車はいっぱいあるというのはわかっている。でも彼らには経験がないので、とにかく今あるオープンカーに全部乗ってみて、体感した上で良いか悪いか判断しなさいとアドバイスした」とも話していた。
26歳の開発責任者についてホンダ広報部に詳しい話を聞こうとしたところ「まだ内緒」との答えが返ってきた。ちなみに安積さんによると「彼は高卒で研究所に入って、5年くらい和光のデザインでモデリングをやっていた」とのこと。S660は来月発表の予定だ。