えんげきのかみさま | コバニャシのひとGUCCIメモ~中村真知子ブログにゃ

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名前はコバニャシ。猫にゃ。生まれた時、雄雌わからず適当にコバヤシって名前つけられたの。でも飼い主は小林さんじゃなく、世の小林さんもいいメイワクよ。飼い主はただのカプチーノ好きの女。ぷっ。なんだか女優とかいうことやってるらしいわ。わたしのが女優っぽいけどね。

十数年前、シアターΧのつかこうへいのワークショップ。

当時「ワークショップ」がなんなのか知らなかった私はペンとノートを持ってシアターΧに向かいました。

高校生で見た
「熱海殺人事件」。

頭をハンマーでごんごんされて、まるで生まれて初めて目が覚めたような衝撃を受けたお芝居を作る人は、どんな人なんだろう。
どんなお話をしてくださるんだろう。
と、ワクワクしながら。


会場に行ったら
「これはオーディションだと思ってください」と言われ、
いきなりダンスを踊らされた。
なんかわからないけど(笑)、ひたすら踊らされた。


でも、まだ憧れの人は現れていない。


ひたすら練習。
影でもみんなひたすら練習。
乳酸出まくって脚なんかあがらなくて、
もちろんうまくなんて踊れるわけもなかったけど、
がんばれば少しずつでもできることが増えていくんだ
という歓びを知ったころ。


あれはどんなタイミングだったか…。
全員が客席に集められ、指導の方のお話を聞いていたときだったのかな?


近くにいた何人かとともに、
ふと何気なく…本当にふと何気なく。
左横の扉を見た数秒後、
あの人が扉を開けてつかつかと(本当につかつかとっ(笑)!)入ってきた。

「え…?」

驚いてみなで顔を見合わせた。
だって何か物音がしたわけでもなんでもない。
言うなれば何かの風とか気配とか
そんなことを感じただけだと思う。
「オーラ」というのでしょうか。


彼の人は、周りにまとう空気とか温度をうねらせながら歩いていました。


思ったより小さな体なのに、
そのあまりにデカすぎる
圧倒的なエネルギーに息を呑んだ。



「えんげきのかみさまに
出会った日」



あの時から、ワタシは熱に浮かされたように、この道を信じてきました。


…ちょっとだけ自慢話をしますとね。
そのワークショップで
「お前がこの中で一番才能がある」
と言ってくださった。
そして、その後に続く言葉には、まったく耳を貸さず、
大至急、止め方のわからない列車に飛び乗りました。


確か、そのあと。
「…けど、この世界は難しいからな。………。よく考えろ。」
でした。
…で、都合よく忘れてた「………。」は、
「嫁さんにいった方がいいかもしれんぞ。」
だったと、ついさきごろ。
その場にいて、今でも劇団を支え続けている同期のお友だちが
教えてくれました(笑)
衝撃の事実。


「お嫁さん行き」の列車と
「女優さん行き」の列車は
その時、同じ駅のホームにあったようです。


まさか。
別々の列車だったとは(笑)


今や、「お嫁さん行き」の列車はどこを走ってるかもわかりません。
…ちくしょー。



もしかしたら先生は「しまった、勘違いだった」と思ったかもしれません。
それでもワタシが劇団にいた間
「お前は芝居のことだけ考えてろ」
「お前は役者なんだから」
と言ってくださった。
(もちろん都合の悪いとこは全部忘れてます(笑))


たぶんワタシには才能よりも何よりも足りないものがたくさんたくさんあったろうと思います。
余計なものも、たくさんたくさん。



これだけ時間が経ってから
やっと。少しだけ。


お芝居のことばかり考えている自分がおります。


続けているのは、もちろんワタシ自身の意志。


でも、自信を持たせてくださったお言葉はやはりワタシにとってお宝なのです。



去年のこの日は、
今日みたいによく晴れて、
やっぱり暑くて、
それでも、
優しい風が通り抜けると涼しくて、
同じように初夏の気持ちの良い日でした。
先生みたいな日だなと思う。



さて。
また止まらない鈍行にゆられつつ、
いっちょやるとしますか。