これまで誰もが勘違いしていた、精進料理の真実。 | kobacabana 3.0

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音楽、食、酒、街、男と女・・・・
日々に感じる雑感を
懸命にまとめています。

年間を通じてカツを食べることは、意外と少ない。
 
家では勿論のこと、外食でもあまり注文する機会が少なかった。
 
毎年春に受ける人間ドック明けの昼には、
 
前夜から絶食してガマンしていた胃へのご褒美に、
 
会社近くの和幸で「さざんか」という定食を頼むのが恒例だ。
 
ロース数枚とメンチカツの中にチーズが挟まっているやつで、
 
シジミの味噌汁を何度もお替わりをし、キャベツも最低限2回お替わりする。
 
カツ丼は、二か月に一回位の頻度で食べる。
 
犯人を落す時に食べさせるこの品は、
 
何故だかとても優雅な気持ちになる。
 
そして背徳感に近い、異様な興奮も伴うのだ。
 
 
 
こんなに美味しいものを食べていいのだろか、
 
きっと近々、罰が当たる、という罪悪感が湯気の中に漂う。
 
 
 
 
賞味期限切れしたお揚げが、一枚冷蔵庫で登用を待機していた。
 
テフロン鍋にめんつゆ、多めの水、味醂、塩少々を入れタマネギと共に、
 
この揚げを一枚ごと一緒に炊いていく。
 
一旦、この煮汁を揚げごと丼に引き上げ、
 
揚げだけ鍋に戻す。
 
そして鍋に油を引かず、そのままカリカリになるまで弱火で焼く。
 
それが上掲した画像だ。
 
めんつゆの甘みをまとい、サクサクとした味わいを作り上げる。
 
 
 
 
 
 
 
丼から鍋にタマネギとめんつゆが一体化したものを戻し、温める。
 
味が整ったのを見計らって、揚げをサク、サクッと包丁で切り分けたものを載せる。
 
このサクサク感、クリスピー感が、たまらく魅力的なのだ。
 
丼に卵を落し、かき混ぜたら、一気に鍋に回し入れる。
 
卵とじの端を箸で整えながら、成形していく。
 
卵とじに隠れた揚げは、どう見ても、カツ、に見えるから面白い。
 
 
 
私は白身がドロドロで残った食感を好まないので、
 
一旦蓋をして10秒程蒸らす。えい。
 
この行程ひとつで卵とじは白身の延命を殺ぎ、
 
黄身への迎合を宣言させる。
 
丼にご飯を盛り、そこに、この卵とじをズルズルっと滑らせて盛り付ける。
 
 
 
 
 
 
このクリスピー感、そして、甘辛い味をまとった演技力、
 
賞味期限切れの揚げの頑張りは、見上げたものだった。
 
卵とじとご飯との融合は、揚げだろうとロースかつだろうと、
 
その存在に影響は受けない。
 
常に、仲良くタマネギの甘さに騙されて、
 
果てた後のように、ぐったり一体となって、横たわっている。
 
 
 
男の料理の鉄則には、素早い、という点も重要だが、
 
洗い物を増やさない、という点も極めて重要だ。
 
家事の鬼才としては、洗い物も自分に跳ね返ってくるわけだから、
 
出来る限り限られた食器や調味器具で遂行する。
 
 
 
この日のMVPは、誰かおわかりか。
 
 
 
丼、である。
 
 
 
①揚げと玉ねぎをめんつゆで炊いたものを一旦引き上げたボールの役目。
 
②溶き卵を溶くための器の役目。
 
③そしてご飯を盛られる役目。卵などは丼の肌に付着していようと関係ない。
 
 
 
こうして私は、平日の朝、平時なら溝の口辺りを通過する時間に、
 
鮮やかに手際よく、最高の味で丼をかっ喰らった。
 
 
 
男は本業での活躍が最も問われる。
 
が、私はそれ以上に、こうした主婦顔負け以上の技量で、
 
更にその上を行こうと、日々精進している。
 
 
 
 
 
これこそが、本当の、精進料理と呼ぶべきではないか。