小説 中田永一 くちびるに歌を | アラサー、サッカー、オタク。

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どうか皆さん、温かい目でご覧下さい。

「誰かと心を通わせることのありがたさ」を強く感じた一冊でした。


中学三年生の女の子、ナズナ。
中学三年生の男の子、サトル。

本編の主題である「合唱」に寄り添い、多くの友人に支えられながら生活を送ってきたナズナ。
「合唱」とは程遠く、ひとりぼっちで学校生活を送ってきたサトル。

対象的な二人が、合唱を通して人と関わり、成長していく姿が描かれた、青春小説です。


作品のネタバレをせず、作品の感想を簡単に。


自分ではない、他の誰かと心を通わせる、同じ感情を持てるっていうことは
とてもありがたいことだと、小説を通して強く感じます。

育った環境が違えば、それぞれ違った感性であるはずなのに、何かきっかけがあって
良いという想いを共有できたり、人と人とのふれあいを通して共感したり。

今作の良いところは、そういった様々な環境自体を丁寧に描くこと、そこから生じる
気持ちを表現豊かに伝えること、そして変化の瞬間を印象的にすること。

合唱という題材だと、どのような音なのか、想像が難しかったりしますが、本作ではその
音を奏でる人間の心理状態、置かれている状態をイメージしてくれることで、場面ごとに
臨場感をもって、音を文字から感じられることができます。

作品の舞台は五島列島ですが、小さい島、という舞台をうまく生かした人間関係の描き方、
人の動かし方、作品の展開もありました。作品のあちこちに物語の伏線が張り巡らされて
いて、とても無駄のない作品であるように感じました。


歌ってやっぱりいいな。

人ってやっぱり温かいな。

苦しかったけど、ポジティブな空気に触れられたな。

そんな読後感のある、とてもステキな作品でした。


TARI TARIを観たのもあって、歌は聴くのもいいですが、やっぱり歌ってこそ、その良さを
感じられるのかも。と思います。

ただただ、すごい、素敵だ、と感じているだけではなく、自分も実際にやってみるからこそ、
どうすごかったのか、どう魅力的なのかがより強く感じられるはずなので、合唱!とは言わ
なくとも、自分で歌う機会はつくりたいなぁと。

ステキな作品に出会うと、自分でやってみたくなるから、時間が足りなくて困りますね笑