ALWAYS 続・三丁目の夕日 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー


『AWAY の大八木姉妹』
飾られた絵のように行儀良く…。



6歳下の妹と私は、子どもの頃、
「ひとりっ子がふたりいる」と
母に嘆かれるほど、我が強いお姫さまで、
当然、姉妹の仲は悪かった。6歳も年上である私が
あまりに我がままで、優しくなかったこともあり、
派手な喧嘩を日々繰り返していた。
けれど、それは自分たちの家の中だけであって、
姫さまはたちは世間知らず、
アウェーに弱かったのでありました。

姉妹だけで親戚に泊まりに行った時のこと。
「よその家」の空気が耐えられなくてシュンとなり、
借りて来た猫、または「絵に描いた姉妹」のように、
ふだんの仲の悪さはどこへやら、ギュッと手をつないで、
「早く家に帰りたいなぁ」と結束したのだった。
親戚の家の居心地の悪さをあげると、
食事の色合いが地味な和食ばかりでつまらない、
歯磨き粉のメーカーが家と違う、
バスタオルは古くてカチカチ、
見たいTVも見られない…
お風呂が暗くてオバケが出そう!
ああ、いやや、いやや! はやく家に帰りたいー!
姉妹は背中を丸めて「変な家…」と
小さくなっていた。が、内弁慶な大八木姉妹も、
ある時から、ここの生活に馴染まなければ
お腹が空き過ぎて死ぬかもしれないし、
風呂にも入らないと身体も臭くなる…
見慣れないTVだって、よく観たらオモシロイしと、
「よその家」のシキタリに折れはじめた。

やがて自分たちの家へ帰ったとき、
姉妹それぞれの「気持ちの幅」が
少し広がっているのを見た母は安堵し、成長を喜び、
これで姉妹仲も良くなるかと期待した
が、激しい喧嘩は相変わらず、ガックリの母…。

けれども確実に私と妹はアウェーの親戚の家で、
「よその家と自分の家の違い」や
「他人の習慣」を受け入れ、学んだはずだ。そうだ、
アウェーでこそ、人はステップアップするっ!!

なんてことを
映画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』を観て、
遠い日の大八木姉妹を懐かしく思った。
映画には、赤の他人の三人が寄り添って成り立つ家と
親戚の我がまま娘を受け入れようとする家が登場し、
大人も子どもも皆、「違い」を受け入れ成長する。

子どもの頃には喧嘩ばかりしていた私と妹が
いつの間にやら、気の置けない友となった現在の私にしても、
故郷を出て、アウェーである東京の暮らしの中で
「違い」を戸惑いながらも受け入れ、
一歩一歩進んで来たように思う。
同様に、地球最大のテーマである平和でさえも、
各々の国の違いを受け入れることから始まる。
ま、 一部のお金持ち一族が
陰謀策略を止めてくれることの方が
第一のステップであることも違いないけれど。



★★★★★☆☆ 7点満点で5点
続編は駄作であるというジンクスを
しっかり裏返しただけでもこの映画はスゴイ。
けど、私が昭和の懐かしい風景に飽きてしまっているので、
マンネリ感を否めないのは確か。といっても この映画は
「昭和の再現」をテーマにしているのではなく、
「つつましさ」を再構築している、この点に感心。

この映画で私が懐かしいと感じたのは
風景ではなく女性だった。まず、
薬師丸ひろ子さんが演じる「割烹着が似合いそうなお母さん」。
ひかえめで、やわらかく包んでくれそうな お母さんって、
今の時代は少ない。今は若くて行動的でバリバリ。
それから、好きな気持ちを押し殺して身を引こうとする、
小雪さんが演じる場末のダンサー。
ただ、一番のクライマックスが いかにもハリウッド的で、
「そんな大胆な女の人、昭和30年代にはいないって!」と
あたしゃツッコミを入れまくっていた。

けれど、この映画を観に劇場へ行く人の多くが
「泣ける感動」を求めていることは確実だし、
その要望にしっかり応えているのが、この映画のすごいところで
「懐かしさを看板にしているのではない」と言い切れるわけで。

親戚の家に預けられた少女が、その家のひとり息子に
「あなたってデリカシーがないわね」と言う。
少年はデリカシーの意味が分からず、
友だちに「デリカシーって何か知ってる?」ときくと、
彼は「知らない、外国のお菓子かな?」と答える。
これと似たようなことが私にもあって、
知らないカタカナのことばについて 友だちにきいたことがある。
返ってきたのは「大丸に行ったら売ってるんとちゃう?」。
私の子ども時代は百貨店が不思議を売る場所で、
「外国」は遠く、まだまだ論外だった。
映画のラストで、少年は少女に贈り物をするが、
私は品物がてっきり「デリカシー」だと思ったら、
少女が欲しいと思っていた感動の物。
私にすれば この時代の子どもにしてはキザに思えた。
というか、私の発想って…新喜劇系かな。

映画の冒頭にゴジラがフィクションとして登場する。
その恐怖! あの迫力! あれぐらいの恐怖を
この映画の本筋にも臭わせてくれたら、
私はもっと共感しただろう。つまり この映画は、
今のデパ地下のようなもの。甘~いものが多すぎる。


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