トンマッコルへようこそ |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

桃源郷を創るというのは、
表現をするうえでの理想形だと思う。
私だって5*SEASONという
雲に似た つかみ所のない季節をきどっているものね。
映画のタイトルになっているトンマッコルは
『子どものように純粋な人々』が住む、
韓国の架空の小さな村のこと。

村人は競うことや進歩することよりも、
共に生き、分かち合い、
歌って踊って一体になれる村祭を至福とする。
これって、なんだかバリ島に似てるなぁ。

この映画に とても共感し、たまらなく泣けた。
逃避に似た異次元の理想郷の話は苦手だけれど、
トンマッコルという村の有り様は
実際にありそうな気がするし、
同じような村は過去の日本にも
実際にあったような気がする。
思えば『ラストサムライ』で描かれていた
明治維新の頃の「最後のサムライが住む村」も
同じ位置ではなかったか。

村単位、町単位。
この単位の横のつながりが幸せでなかったら、
世界から命の奪い合いが消えることは
なかなか困難ではないだろうか。
かくいう私も隣家の住人の顔ですら知らない。



★★★★★☆☆ 7点満点で5点
舞台は朝鮮戦争の真っ只中、
連合軍、韓国軍、人民軍、三組の兵士たちが
トンマッコルヘ迷い込む。
敵対する彼らがいつしか村人たちに癒されて⋯
というパターンを想像するに容易い。
が、どうやって⋯?
この課程が微笑ましく楽しい。でも
スローモーションでやたらと引っぱる場面は
ちょっといただけない。

スタジオ・ジブリのアニメを
実写で創ったらこうなった、という世界。
ただし、冒頭に出てくる銃撃場面は生々しく恐ろしい。
だからこそ、トンマッコルが桃源郷として位置付けられるし、
寓話性を伴い、観る者に喜びを分かつ。

私が好きなのは中盤まで。終盤は苦手。というか嫌悪。
村に溶け込んだ兵士たちの結末として、
映画は悲劇を選択し、
結果、村は守られるという幸福を呼ぶ。
戦争の悲惨を汲みたいのは理解できるけど、
円満な結末を選択することも可能なわけで‥‥。
戦死や自己犠牲を美化していると私には映った。
最後まで寓話として
「アニメのようなお話」「めでたしめでたし」
で終わるのが私の理想の物語。

2006年。この映画が描いた戦争は まだ終わっていない。
朝鮮半島は現在も南北に断たれ、
今や 日本も含めて 緊張は張り詰めた糸のようだと
各メディアも多くの政治家もいう。

架空の物語に、現実情勢を持ち込んで悲劇にすることを
むやみやたらと嫌う、私という馬鹿者は。

~シネマスクエアとうきゅうにて観賞~






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