『花に聞く』という
素敵なタイトルの作品展へ行った。
そこでは20数名のイラストレーターによる
花のイラストがズラリと展示されていて、
ようやく来た春を噛みしめるには至極適当な、
折しもオープニングパーティーも重なっていたので、
“花の声”を聞きに来たお客さんや、
イラストレーターさんも詰め掛けて、
それこそ会場は春爛漫の様相。
その場に立っていた私の心の内は、
どの花がきれいか、と選ぶよりも、
私なら⋯ 5*SEASONなら、
こんな花を咲かすのにという考え。
なので会場内の“花の声”は耳に届かず、
壁の絵は ずべて頭上の高いところへ舞い上がり、
頭の中でスケッチブックを広げて、
私なりの花をあれこれと空想していた。
もうひとつ、どうやら私には
大勢の人がひしめく中で絵を見る
ということは難しいようで。
ふと、たくさんの人息に疲れ、
ギャラリーの外の空気に触れてみた。
ひんやりとした夜の空気の中で、
フーッと深呼吸、見上げると
民家に植わっている一本の桜の木が
見事な花を付けていた。
それは昼間に見るよりも桃色が濃い桜色で、
私はその時、ようやく
花の声を聞いたような気がした。
●オーパギャラリ－『花に聞く』