ミリオンダラー・ベイビー その1 |  ◆ R I N G O * H A N

 ◆ R I N G O * H A N

歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

ナミダグラス

水がいっぱい入ったグラスから
ポタリポタリと雫が落ちる。
『ミリオンダラー・ベイビー』を、あたしは
終始この状態で観た。けれども、
涙を流したからといって、
胸打たれ、心が熱くなったかというと、
それは また別の話なのだ。この映画を あたしは、
とても冷静な、そして映画に長けた人間による
尊厳なラブストーリーと受け取った。


とっても静かで綺麗な映画だった。
評判どおりの優秀さ。堅実な脚本と映像、
もちろんあたしも、いい映画だと思った。
感動もした、涙もした、おそらく多くの者を
まったく飽きさせずにラストカットまで導き、
ほんのりとした祈りに似た希望を残して
映画は幕を下ろす。けれど、あたしは……。

いつもは最後に書いている7点採点を
今日は先に書いてみる。『ミリオンダラー〜』は
★★★★★☆☆ 7点満点で5点。

この採点方法は何かというと、
かれこれ4年前になるのかぃな。
友だちのワッシーと映画サイトを始めるにあたって、
言葉少ないワッシーの「好き度」を
皆に分かりやすく表すためのバロメーターとして始まり、
あたしもワッシーに ならって採点を始めた。

ふつう5点満点で採点されることが多いのに、
なぜ7点満点なのかというと、ワッシーは虹が好きで、
7点は虹の7色を意味。つまり、満点作品に出会うと、
見事に虹がかかって「 おめでとう」となる。

この7点採点はワッシーが続ける限り、
あたしも続けることに決めている、
というか、そもそも あたしは性格悪いので、
「映画を点数で判断するなんて おこがましい」、
だなんて奥ゆかしいことは、絶対にいわない。

だって、あたしは れっきとした客だし、
いつも間違いなく、銭をはたいて映画を観てるのだ、
ヌケヌケと採点したるっ。
たとえ世間的に評判が悪い映画でも、
こぶ様が満点! と思ったものは満点だし、
いくらオスカーを取ろうが、
海外の映画祭で絶賛されようが、
ダメなものはダメ、無星だってありえる。
そもそも、採点だなんて気取ってるけど、
しょせんは「採点ごっこ」、「先生気取り」、お遊び。
しかも、あたしは採点を面白がっている。

ただ注意点があって、それは
あたしの7点採点はワッシーの場合とは違って、
必ずしも「好き度」ではないことを言っておきたい。
というのも、今回の『ミリオンダラー〜』のように
5点というのが 特に複雑な“お点”なのだ。

説明すると7点の真ん中は4点。
100点満点で いうと50点で、
変な表現になるけど「普通に よかった」という感じ。
だから問題の5点はそれりより一段上ということで、
「かなりいい」となるのだけど、どっこい、
5点に「好き」という感情が含まれるとは限らない。
時として、5点と採点した映画の中には
「いい作品なのは認めるが
 こぶ様は あまり好きじゃない」
というヤヤコシイものも含んでいるのだ。
過去の例でいうと『シティー・オブ・ゴッド』とか。

で、本日の記事タイトルである『ミリオンダラー〜』の
5点もそう。
「傑作なのは認めるけど、好きじゃない」のだ。
なぜ? なぜ あたしは好きじゃないのか。

以前の記事にも書いたけど、
ひとえに これは御大イーストウッドの型通りの作風で、
ピラミッドの頂点で作っている気がして
あたしは冷めてしまう。
いや、だからいいのだという好みもあろうが、
イーストウッドの映画のテーマは いつも重い物を含んでいて、
映画全般に渡って、重厚なムードを帯びているのに、
いつだって結末で主人公が煙りのよう消えるか、
所在が分からなくなるか、事実が あやふやになって
スクリーンの闇に呑まれてしまうかで、
「そればっかりは ないんやない?」と こぶ様は頬杖をつく。
これはイーストウッドが常に、
ご自身の実年齢にそった作品を手掛けられるなかで、
特に あたしが「御大シリーズ」と呼ぶ作品に顕著で、
言うなれば、本作も『ミスティック・リバー』も、
『許されざる者』も、同じテーマが含まれているのが原因だ。

ネタバレにならないよう伏せ字にすると、そのテーマは
それは
「場合によって人は、
 殺人を犯してもいいのか」

ということ。
重い、非常に重い。重いのに、またもや
『ミリオンダラー〜』の主人公もどこかへ消える。
ここが気色悪い。たしかに、
綺麗で憂いを含んだラストシーンだった、
けど、ラブストーリーの終わりや、
『あしたのジョー・アメリカ版』には適しても、
「殺人」が起きてしまったのだ、
煙りでいいのか、あの主人公は人間じゃなかったのか?

といっても、あたしは、主人公がとった行動
「尊厳ある死」
非難するつもりはまったくない、
心を通わせた ふたり、「ボクサーとトレーナー」が決めたことなのだ、
物語としても「あの結末しかありえない」と思う、
が、御大イーストウッド監督よ、
カッコつけんなよ、もっと人間って不様だろうよ、
いつもいつも観客まかせにして逃げんなや、と
あたしの中のガキンチョが叫ぶ。

ただ、物語から煙りのように主人公が消えたからこそ、
『ミリオンダラー〜』は多くの人の胸を打ち、
オスカーも授与されたのだ。
ケド、わかっちゃいるけど・・・長いので明日に続く


***************************
代官山キネマ展情報〜!

会場の入り口にこんなんあります!
       ↓


●代官山キネマ詳細はこちら
会場のアートラッシュはこっち


*******************************
相方・でこへのつっこみ本日分
ふふー、でこよ、
マリリン・モンローは描きやすいで。
ヘップらばーんは、もしも似顔絵検定があったとしたら、
最上級クラスやろなぁ。森久美子はんとかは、
基礎編って感じやろか。
‥‥! おうおう、でこ!
志垣太郎=トム・クル説を頭ごなしに否定したな?
これまでの例からいくと、でこの場合
それは認めたことになるねんかなぁ。

●志垣太郎=トム・クル説に感心している
こぶの相方・でこのブログ