ベルリン, 僕らの革命-2 理想って |  ◆ R I N G O * H A N

 ◆ R I N G O * H A N

歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

洗いざらし


洗いざらしのTシャツと綿シャツ。
シワシワのお婆になっても
それらが似合う人物でいたいと
学生時代のあたしは思ったもので、
今も その想いは変わらず。
『ベルリン, 僕らの革命』の主人公3人は
いわば「洗いざらし時代」の真っただ中。


「この映画は 良さそう!」
と、予告を観て かなり期待し、さらに
カンヌでも評判だったというオスミ付きまで持って、
スクリーンの前に座った映画。
その結果、「期待過度」が原因のあまり、
グッタリして帰路に付くことも想像したわけですが、
ぜんぜん期待を裏切ることはなく、
まったくの壮快作! よかった~。

この映画は理想だ。
監督のワインガルトナー (覚えにくいっ) の理想であり、
東西統一後のドイツの理想でもあり、
世界中の若者の理想でもあり、大袈裟だけど、
人類の理想でもあり、地球という生命体の理想である。
だから、この映画は、そのまんま あたしの理想でもある。
注意したいのは、この映画が理想的な青春映画とか、
「理想的な何々」として形容されるのではなく、
“理想そのもの”だと断言したいこと。なぜなら、
現代社会のネクタイという名の首輪に つながれ、
洗いざらしのシャツの着心地を忘れてしまった者へ、
理想を掲げ、理想を追求することの尊さや、
志しを高く持つことの意義を
今一度、思い起こさせる気高きロード・ムービーだから。
とはいえ主人公の「エデュケーターズ」の旅は終わらないし、
彼らに関わったオヤジの旅も まだ終わらないだろう、
スクリーンを通して彼らに関わった あたしの旅も
まだまだ終わらないように。

かつて日本には、若き世代が政治に強く関心をもち、
積極的に「革命を起こそう」と活動した時代があった。
マスメディアで よく飛び交う
“団塊の世代”というコトバは、
あの時代を生きたオッサンたちのことで、
当時の若者は今 50代中頃から後半の歳となり、
実質社会の実権を握っている人物だったりする。
映画『~僕らの革命』は、ドイツを舞台にした、
そういった団魂の世代が主動するところの
「社会の成り立ち」に疑問をもち、
正義という小石を投げ入れる若者たちが主役。
彼らは「エデュケーターズ」と名乗り活動していて、
映画の原題名でもある「エデュケーターズ」は、
そういった反政治活動をアート・パフォーマンス的に行い、
世間の話題をさらっている“謎の存在”、
で、かなりカッコイイのだ。
どんなふうにカッコイイかというと‥‥。

「エデュケーターズ」のヤンとピーターは、
裕福すぎるお金持ち (社会の実権者) の家へ侵入し、
金になりそうなモノを泥棒する‥‥のではなく、
高価な家具や家電製品を、ごっそり配置変えする。
時として それは、タワーのように積み上げられ、
まったく使い勝手の悪い 現代アートに早変わり。
そこに「エデュケーターズ」はメッセージを残す、
「儲けすぎだ!」
「エデュケーターズ」の意味は「回収する」だそうで、
儲けすぎや矛盾を地道に回収してまわる、という
テロとは対極にある真摯な活動だとあたしは思う。

彼らのやっていることは立派な家宅侵入罪だけれど、
ヤンとピーターには気高い理想とイデオロギーがある。
盗みは しない、暴力に頼らない、
ただ彼らは、彼らが言うところの“太った豚たち”に、
「貧富の差」を生む社会構造の疑問点を提示し
やがて革命が起こることを願っているのだ、カ~ッコイイ!

現実に彼らと同様に理想を抱き
行政や社会に疑問を感じるという人は少なくない、
が、その感覚を下敷きに、何かを実行しているのかというと、
具体的には何もやっていない人が多数ではなかろうか。
そんな中、ヤンとピーターの手段は間違っているかもしれない、
でも、彼らは行動を起こしている。さぁて、
こういう人間が、はたして日本に どれぐらいいるだろう?
あたしを含めて、常に疑問と信念をもって、
世界情勢に耳を傾ける習慣が
今の日本人に どれぐらい浸透しているんだろう。
もしも、ヤンとピーターが掲げる理想像を
「若さゆえの絵空事」だと鼻で笑う輩がいたならば、
あたしは下卑だと力いっぱい非難したい。

と、ここまで、映画から感じた主義主張でありまして、
遅まきながら映画のストーリーはというと、
ささやかな活動家を気取るヤンとピーターですが
ふたりの友情の絆が、ある きっかけから少しずつ変化し、
やがて、事件発生! 事態は転がるように急展開する!
男と男の友情に変化を与えるもの、
それはいつの世も色恋沙汰と相場は決まっていて、
ヤンとピーターの場合は“親友の彼女”。
実は その彼女も社会に疑問を持つ小さな革命家で、
利益追求に明け暮れる企業に疑問を感じ、
チラシ配布などの活動をしている。
3人の価値観は同等で、だから恋模様がユラユラ、そこへ
ドイツ人の“団塊の世代のオッサン”までもが巻き込まれ、
いわば「理想 VS 金」が ぶつかり合う。
このあたりは『俺たちに明日はない』のような
悲劇に向かう疾走感にも似て、雲行きが怪しい。けど、
この映画は少しずつ事態が好転していく、ここが素晴らしい。
なぜなら、「少しずつ好転すること」こそ、
本作を“理想そのもの”だと捉えている最大の理由だから。

映画は主人公の若き革命家3人を みずみずしく、
そして つややかに、映像へと移行することに成功してる。
音楽の使い方も抜群にいい、好感覚が残る。
ただ不満なのは、実社会では映画のように 2時間ぐらいで
変化の兆しすら見えないないわけで‥‥
‥‥と思ってたら、そうでもない、という出来事が、
実際に あたしの周りにも起こったのです。
というわけで、今日だけでもダラダラと長いのに、
『~僕らの革命』の話は明日も まだつづく。
そもそも、「あたしの理想」に関わる映画なので。

*************************
コマ犬の相方・でこの病状を報告するスペース
どうやら、でこの二の腕を激痛が襲っていて、
土曜日から接骨医院に通っているようです。
でも痛みが和らぐどころか、
反対に痛みが増してるって。え~? 大丈夫か?
医者の掛け持ちした方がええのんちゃう?
無理してマウスなんて持ちやがって~。
この、根っからのツッコミ犬!

●相方・でこのブログ
激痛で死の淵をみたくせに毒づいている‥‥