春夏秋冬そして春 -その2 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー





水面をただよう静かな寺。
考えようによると かなり贅沢。あたしゃ住んでみたい!


絵を描く人というのは、
これという決定的な理由はないのだけれど、
映画を観ていて なんとなく分かる。それは
『春夏秋冬~』を観ているときも同様で、
スクリーンを次々に移り変っていく季節を
ただ ぼんやり見ながら、あたしは
「きっと、この監督は絵描きだろう」と思った。
別に、どうという確信はないのだけれど、
同じムジナは分かるというか、単なるカンというか、
それでも『春夏秋冬~』については、
美しくクリアな映像が最もそれを語っていた。
そうして、この人の画法は油絵だ、と思う。
全体の構成はスッキリとした東洋的な水墨画なのに、
タッチはかなり情熱的で、途方も無い荒削りな“男”だった。

映画は、人の生を四季の うつろいに重ねた静かな映画なのに、
宮廷文化における花鳥風月のような雅びさはなく、
言葉は悪いけれど、無学な男が力任せに作った映像世界。
いっそのこと暴力的といっても、いい。

映画界の鬼才といわれている
キム・キドク監督の映画を観るのは
あたしは この映画が初めてだった。
結論からいうと、あたしはこの監督が かなり好きだ。
好きだけれど、変な話、各々の作品はどうだろうか、
もしかしたら
「キム・キドクにしては異質な一本」といわれている、
本作以外は全て嫌悪するかもしれない。または反対に、
めちゃくちゃ好きになるのかも‥‥まぁ両極端だろう。
現時点では他の作品を観ていないのだから、
結論づけることはしなくていい、ただ、
そう思っている最大の理由は、この監督の女の扱い方だ。
この人は女を実に荒々しく映画に登場させ、
そしておそろしく不用心に配置して魅せる。
おそらく、この男(監督)には繊細だとか、
和みという単語は、まったく無縁だと言い切っておきたい。

あたしはキム・キドクは異端者だと思う。
おそらく「映画を勉強する」という概念などないはずで、
体感することで映画というものと出会い、
そこで得た想いを肌に刻んでいくタイプではなかろうか。
そんな荒削りな男をあたしが好ましいと思うのは、
たぶん、小さくまとまろうとしない未知数の才能。
加えて、あたしは異端者が好きだ、
きっと、あたし自身もそういう部分をもっているからだろう。
そういえば不思議なことがあった。

映画は ひとりの男の生を年代ごとに四季で捉え、
それぞれの章を別人が演じている。
ようするに4人の俳優が1人の男を演じているのだけれど、
その4人の顔が似ていないことといったら…
という苦言はここでは棚上げするとして、
「冬の章」で現れた4人目の小太りの男を目にしたとたん、
あたしは「あ、この人が この映画の監督さんなんだ」と
ごく自然に思った。その思い付きが正解だと分かるのは、
映画が終わったすぐ後、エンドクレジットを目にしたときで、
キム・キドクについての知識など、
その時は何ひとつなかったというのに、
分かるものは分かるんだなァと
自分の野生に納得して席を立った。ほんに不思議やなぁ。

「これはどうかなぁ」と疑問に思ったのは、
極端に少なくしたセリフと端的な画面構成は
和の心にも通じる東洋美の世界、
それは あたし自身も目指すところで大いに共感するのだが、
絵創りは良いとしても、
セリフについては あと少し吟味する必要性を感じた。
言葉が少なければ少ないほど、
ひとつの言葉が持つ重要性が大きくなってくる。
「ここで、このセリフは必要なのか、これでいいのか」
そう思った場面が多々。音楽についても同じ。

★★★★★☆☆ 7点満点で5点
純愛路線の韓国映画が苦手な人にはおススメ。

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でこへのツッコミ
『カンフ-ハッスル』、観たんや~。
そっちの感想を読む限りでは、ぼちぼちという感じかな。
実は、あたしもカンフー映画が苦手でなぁ、
あんまり観てないねん。というより、逃げてたというか。
ただブルース・リ-だけは別なんやけど、
『カンフー・ハッスル』を、ブルース・リ-につづく
カンフー掟破りの第2号にしようかしまいか、悩むわぁ。
そうかて、今月末には「ヴァンヴァン+モニカ」の話題作
『スパイ・バウンド』も公開されるねんで。
『オーシャンズ~』と合わせたら、
それで2本やん。ということは月3本を目安とする あたしとしては、
今月観ていい映画はあと1本。そやし、
『カンフー・ハッスル』は、もうちょっと悩んでみるわ~。

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