【刑法】②窃盗罪の主要論点の整理~不法領得の意思 | うんちくコラムニストシリウスのブログ

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●不法領得の意思の内容
①権利者を排除して他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従って、これを利用又は処分する意思である(判例・通説)
→支持者:瀧川幸辰―元京都大学総長、故人、滝川事件の人物としても有名
 藤木英雄―元東京大学教授、故人、行為無価値論の大家団藤重光門下。天才の呼び名も。
 大谷實―元同志社大学総長、受験生には人気の学説(私は支持派ではないがw)
 中森喜彦―京都大学副学長、行為無価値論者。刑法各論は名著
 西田典之―東京大学名誉教授、結果無価値論者。平野龍一門下。
 林幹人―上智大学法学部教授、平野龍一門下等
→(イ)自己の所有物として利用・処分すること、(ロ)その経済的用法に従って利用・処分することを要求→(イ)の要件は使用窃盗を(一時使用の 後に返還する意思がある訳であるから、自己の所有物として利用・処分する意思はない→使用窃盗行為は窃盗罪には当たらない)、(ロ)の要件は毀棄・隠匿を 目的とする奪取行為を(毀棄・隠匿は、その財物の所有者であれば自由になし得る処分行為ではあるが、財物による本来の用法に基づく享受行為とは言えないの で、そのような享受の意思の伴わない奪取行為は窃盗罪を構成しない)、それぞれ窃盗から排除するために必要とされる。

②その財物につき自ら所有者として振る舞う意思と解する説
→支持者:小野清一郎―元東京大学名誉教授、故人
 団藤重光:元東京大学名誉教授、元最高裁判事、行為無価値論の巨頭
 福田平:一橋大学名誉教授、団藤重光門下。目的的行為論の人物としても知られている

③他人の物によって何らかの経済的利益を取得する意思と解する説
→支持者:平野龍一:元東京大学名誉教授、元総長、故人、結果無価値論の巨頭
 前田雅英:首都大学東京大教授、平野龍一門下。
 西原春夫:元早稲田大学名誉教授、元総長(なお、西原博士は「経済的用法」に限らず、「その物の効用の利用」にまで拡張すべきであるとされる)

●使用窃盗の取り扱い
→判例:使用窃盗の可罰性を肯定する傾向にある
→完全に自己の支配下に置く意図の下に所有者に無断で使用窃盗行為をした場合、たとえ使用後に元の場所に戻しておくつもりであったとしても、不法 領得の意思がある(最高裁昭和55年判決)→判例を受けての学説:使用窃盗が不可罰とされるのは、被害が軽微であって推定的承諾の存在や可罰違法性(個別 の刑罰法規が刑事罰に値するとして予定する違法性のこと)の不存在による場合に限られるべき(植松正:一橋大学名誉教授)

●毀棄・隠匿を目的とする奪取行為の取り扱い
大審院判例(大正4年):享受意思がない場合には窃盗罪の成立を否定してきた
最高裁判例(昭和28年):隠匿目的で行った奪取行為について、奪取した財物を自己の物として利用・処分する意思に欠けるから窃盗罪を構成しない

●窃盗罪の保護法益と不法領得の意思との関係
占有説を採っても必要説を主張することは論理的には十分に可能である。