『特上カバチ!! ―カバチタレ!2―』第18巻を読みました
以前、このブログのコメントで教えていただいたモーニングに連載されている漫画が単行本として発売されたということで、買ってきました。↓です。
帯には「潰す、貧困ビジネス!!」と書いてありました(笑)。
簡単にあらすじをいうと、ゼロゼロ物件業者である「ニッコリ不動産」に追い出しをかけられた賃借人が対抗して法律家と協力し、途中でからんできた保証会社を含めてやっつける、みたいな話です。
業者名ややり口からしても、おそらくスマイルサービスをモデルにして書いているのだと思います。
追い出された賃借人が警察に通報しても、民事不介入を理由にして放置されたり、賃借人の目の前で荷物を撤去して、その後リサイクル業者に売り払うとか、すごくリアルでよく取材して書かれていると思います。
ただ、原作を書いている田島隆氏自身も行政書士ということで、いくぶん仕方ないのかもしれませんが、トリッキーな方法を含めて法律的な対抗手段をいかにとるか、といったことに重点が置かれていて、結局法律家が動かないと解決しないんだということを強く印象づける内容となっている、と感じました。
たとえば、賃借人である朝澤が一生懸命必死で相手業者に対抗しようと立てこもりを企てて、担当になった主人公である田村は親身になって動くわけですが、所属している大野事務所の法律家たちはどこか他人事で、特に所長の大野は「事件で遊ぶ」といったことを口にしています。で、結局田村では事件を解決させることができなくて、「事件で遊んだ」大野が一緒に「事件で遊ぶ」知人の弁護士に刑事告発させて、マスコミを動かし、解決に導くっていうどーしよーもない結果になっています(笑)。はっきりいって、これでは救いがないです。運動にはなっていない。
悪質な業者を社会的に追い詰めていくためには、単に一人の賃借人が立ちあがるだけではだめで(それはそれで素晴らしいことですが)、単に一つの法律事務所が動くだけではだめなわけです。しかも、法律家が金にならないからと言って、あえていえば自分たちの「手柄」とするために「事件で遊ぶ」というのはもってのほかです。それは、闘っている当事者を利用してまさに「もて遊んでいる」ことに他なりません。
そうではなくて、当事者と法律家が共に闘うのであれば、人の弱みにつけこんで少しでも利益を上げようとたくらむ業者に対して、絶対そんなことはさせない、許してはならないといった追いつめていくための社会的なうねりを作っていかねばなりません。そうしないと、たとえば悪質保証会社に追い込みをかけられる朝澤に対して、「近所迷惑だから家賃払えないなら出ていけ」と恫喝する近所の住人にはなんにも対抗できないでしょう。このような近所の住人のほうがよほどやっかいなわけで、ここを変えていかない限り、悪質な業者をいくら排除したところで、闘う賃借人を支援する輪は広がっていかないわけです。
そのためには、ゼロゼロ物件業者がなぜ出てきているのか、どうしてそこに頼らざるを得ない賃借人が多くいて、滞納せざるをえないのか、といった社会的背景をもっと描く必要があるし、居住問題を全般的にみる必要もあるかと思います。そうしてやっと、法律技術を使うことで表面的に事件を解決して終わりにするのではなく、なぜこのような問題が起こっているのかを理解することができる。
つーことで、自分としては、事件についてはよく取材しているなーとは思うものの、法律技術に頼りすぎてて、うすっぺらい事件解決になっているのが残念!というところです。
あと、素朴な疑問なんですが、主人公の大野は行政書士でありながら、業者に対して訴訟恫喝しているんですが、これって、大丈夫なんでしたっけ?職域の問題があるかと思うのですが、行政書士に訴訟代理権ってあるんでしたっけ?
それから、最後のところで、登記簿で自社物件じゃないことを理由にして不動産屋の追い出し行為を非弁行為に当たるとしているわけですが、これって業者が貸主になっているサブリース業者でも該当するんですかね?おそらくニッコリ不動産は貸主になってるはずなんですが、物件を所有していない貸主の追い出しも非弁になるのでしょうか。そーなると、ほとんどのサブリースは違法ということになるのですが。。。