スマイルサービス訴訟の和解を受けて
先月4月15日の和解を受けて支援する会として声明を出しました。
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まだまだスマイルサービス事件は終わっていない!
一人の泣き寝入りも許さない徹底した責任追及を!
○09年4月15日にスマイルサービス裁判が和解終結
スマイルサービス事件にご注目のみなさん、こんにちは。こちらはスマイルサービス闘争を支援する会です。09年4月15日にスマイルサービス裁判は第1次訴訟(08/10/8)、第2次訴訟(08/12/17)の原告9名が和解に応じ、裁判はいったん終結しました(反訴事案は進行中)。しかし、その和解内容は秘密条項により一切公開されていません。ここでは、スマイル裁判闘争の意味と裁判闘争を含めた運動の成果について考えてみます。
○そもそもの始まり
そもそもスマイルサービス事件は、04年から相手業者が「施設付鍵利用契約」という借家人保護の法制を脱法するシステムを作り出し、違約金の徴収、鍵交換、荷物撤去、荷物処分といった行為を継続的に組織的に営業行為として行ってきたことに端を発します。07年後半になってやっとその実態が明らかとなり始め、08年3月頃からは支援する会として活動を始めました。当時は、相手業者が行っていることが、法律家や専門家は別にしても、多くの入居者にとっては違法か合法か判断がつかずグレーゾーンであるとされ、当時進行していた被害に対してさえも、多くは泣き寝入りを強いられていました。被害当事者にしても契約書に書かれていることもあり、あるいは、行政や消費生活センター、警察がまともに機能しなかったことにより、多くの被害者が孤絶され、泣き寝入りを迫られてきました。
それを打破するためには相手にしっかりと違法性を認めさせ、反省や謝罪の上、賠償をさせることがなによりも求められたのです。
○大きな社会的うねりを作りだすことに成功
支援する会としては、この間、刑事弾圧のリスクを背負いながらも10波近くに渡るスマイル物件を対するポスティングによる呼びかけや、相手側代理人によるHP閉鎖という妨害を受けながらのブログ運営などを通して、当事者同士の結びつきや多くの被害者の被害回復にあたってきました。 「がめつく行こう、集金に!」「一人の泣き寝入りも許さず最後まで徹底的に弾劾しよう!」といったスローガンを掲げた呼びかけにより、20名以上の方々が自力での違約金返還に成功し、原告5名による第1次訴訟に結び付けるといった成果を上げることができました。また、一部の原告に対しては店頭交渉や、生活支援も含めた闘争支援活動を行ってきました。これらの運動を通して、なにより、これまで個別の問題として分断され、自己解決を迫られてきた借家人トラブルを、業者による「追い出し行為」というより大きな社会問題として顕在化させることができたのは大きな成果であると考えます。
被害を受けた入居者はもちろん、あるいは被害当事者ではない現入居者からの情報提供、さらには元社員の告発を含めた、無数の協力者がいたことで、この運動が成り立っていたことは疑いようがありません。そういった声をひとつひとつ大切に、時間をかけて耳を傾け、相手企業を弾劾する社会的なうねりを作り上げてきました。私たちはそういった闘争を陰に日向に支えてくれたみなさんにまずは感謝しなければなりません。彼らの力がなければ現時点のところまでも相手を追い詰めることは決してできなかったでしょう。運動は裁判闘争に特化したものではなく、裁判に至るまでにも多くの支援者協力者がいたことを忘れてはなりません。
○スマイルサービス裁判とはなんだったのか
では、スマイルサービス裁判とはなんだったのでしょうか?
和解内容は、推測するしかないですが、被告から原告への多額の金銭の支払いがあったものと思われます。法的知識や交渉力がなく、多くは金銭に困窮している貧困層につけ入り、出来得る限りの収奪を行い、取れるものがなくなると追い出し、いざ追及されると札束で横つらを殴り口を封じる。こういったスマイルのやり方は一貫して卑劣です。
一方で、被害を受けた原告9名が制裁的な意味を含めた賠償金を奪い取り、相手企業に対して、一定のダメージを与えることができたのは、スマイルに対してという限定的な意味で今後の抑止力も含めた成果でしょう。
しかし、今回の原告は9名でしたが、いまなお、被害回復に至っていない多くのスマイル被害者がいます。また、この裁判を注目し支援してきた多くの支援者協力者がいます。相手業者の行為が、当初グレーゾーンとされ、行政や警察からも相手にされず、泣き寝入りを強いられてきた被害者からすれば、事実関係を明らかにし、白黒はっきりとつけさせることが求められていたことは明らかです。さらには、社会的にも働きかけ、注目を呼びかけ、傍聴者も集めて進められてきたこの裁判は原告だけのものではありません。弁護団と原告には裁判について社会的に説明をする責任が生じているのです。刑事的な責任追及を含めてうやむやな終結になり、秘密条項の入った和解を受け入れることでその説明責任が果たされたといえるでしょうか。自分たちの裁判闘争に対して支援や注目を求めておきながら、最後には結局自分たちの利益だけを追求しておけばいいということにはなりません。そのようなことに対してほとんどの弁護団や原告が自覚的に意識できていなかったことに対しては、大変遺憾としかいいようがありません。また、そのことを原告や弁護団と共有できていなかったことについて、支援する会の力不足を率直に認めなければなりません。
○スマイルサービス事件は終わっていない
スマイルサービスは現在ハウスポートと名前を変え、なにごともなかったかのように営業を続けています。いまなお、スマイルは家賃を遅れそうな入居者に対して来店を求め、あるいは滞納者の部屋に訪問し、契約を解除し荷物撤去に承諾するという趣旨の「合意書」という名目の実質的な解約書を書くよう強要しています。さらには、系列業者であるバジリカも含めて、定期借家契約への切り替えを書面を郵送するだけで図るという違法行為を継続しています。また、違法業者の物件に住み続けることを余儀なくされている入居者の不安は解消されるはずもなく、現在も支援する会宛に相談は続いています。私たちは、引き続き一人の泣き寝入りも許さず、相手業者に被害回復を求めると同時に、継続中の違法行為についても追及を続けていきます。
まだまだスマイルサービス事件は終わっていません。
不安定な住居を強いられる住まいの貧困(ハウジングプア)も社会問題化しています。これまで政策として進められてきた持ち家幻想が崩壊した現在、若年層の不安定雇用層にとっても住まいの問題は切実かつ切迫した問題です。被害者の被害回復は当然ですが、より当事者同士がつながることによって、誰もが安心できる住まいを求める運動を、さらに先の段階へ進めることがいま求められているのではないでしょうか。