ブラジルでビキニが使用され始めたのは50年代の終わりだ。カルメン・ヴェロニカ(Carmem Verônica)やノルマ・タマル(Norma Tamar)といった女優が 、南アメリカで最も有名なホテル、コパカバーナ・パレスの前に人々を集めその新しいスタイルを披露したのが始まりという。

その後他の国と同様にビキニが禁止された時代を経て、「デンタル・フロス( Fio Dental )」と呼ばれた糸のように細い水着が、リオデジャネイロのビーチのシンボルとなったのが60年代のことだ。70年代にはブラジルでTバック水着が大流行し世界中へ飛び火。現在の布地の面積が少ないビキニスタイルが定着した。90年代には海外輸出向けに、布地の面積を大きくして生産していたという。それが近年のアメリカにおけるブラジル水着の大流行を機に、南国らしい色彩と、繊細なデザインに大胆なカットを特徴とするブラジル水着が世界に知れ渡ることとなった。


ブラジル水着の流行と共に、それを着こなすブラジル美女の姿にも注目が集まった。水着姿の美女が寝そべるビーチの風景は、いまやポストカードの代表的写真だ。ブラジル水着ブランドには、伝統的なワンピース型の水着からビキニ、ビーチウェアまでそろっているのが一般的だ。しかし多くのブラジル女性が愛するのは、身体をより美しくみせると信じられている極小ビキニ。着こなすためにジムへ通い身体を鍛え、脱毛技術まで発展させてきたのだ。


しかし実際のビーチはそんなスーパーボディーで埋め尽くされているわけではない。肥満体質の女性が少なくないのはブラジルも例外ではない。それでも彼女達の愛するのは極小ビキニだ。垂れ下がろうが食い込もうが、あくまでもブラジリアン・スタイルを保とうとする誇り高き女性達には頭が下がる。

そんなブラジル女性を2005年、ニューヨーク・タイムズが「“イパネマの娘”はもう過去の話だ」と皮肉った。ビキニからはみ出た肉の多い女性の写真を掲載し、ブラジルが誇るトム・ジョビンのボサノバ曲を引き合いに出しての記事だった。これに対しブラジル側は猛反発。写真に写っている女性を探し出し、外国人観光客だったことを証明し汚名を 挽回したものの後味の悪さが残った。


ジョギングする人、日光浴をする人、ビールを片手におしゃべりに熱中する人々。ブラジル人にとってビーチは集いの場、社交の場だ。一年中ビーチライフを楽しめる地域、何キロにもわたる美しい海岸線を誇る観光地が多く存在する。そんな気候と地形が大きく影響し、「ブラジル水着」を発展させてきたブランドは更なる世界進出を試みている。

アメリカンリゾートで大注目のブランド、「小さな布」を意味する「 POKO PANO(ポコパノ)」は24カ国で水着を販売。またジゼル・ブンチェン、ナオミ・キャンベル、レティシア・バークホイヤーがモデルを務めたことがある「Lenny」。男性用水着も有名な「 Rosa Chá(ローサッチャ)」など数々のブラジル水着ブランドがすでに世界進出を果たしている。

2008年8月、ニザン・グゥアナースは11月に「Rio Summer(リオ・サマー)」と称される、ビーチファッションのコレクションをリオデジャネイロで開催することを発表した。広告コミュニケーション企業「グループABC」の創立者で、高級ブランド専門デパート、「Daslu」の有名バイヤーであるDonata Meirellesを妻に持つニザン・グゥアナースのこの計画は、新たな経済効果を生む大イベントのひとつとして大きく報道された。

「コパカバーナ城砦」で11月5日から8日に開催予定のこのイベントには、デザイナー、ヴァレンティノの右腕を20年以上務めたCarlos de Souzaが、国際的セレブを多く招待すると公言しており、ブラジル国内だけでなく、世界からの注目が集まることが予想されている。カエターノ・ヴェローゾ のライブでのオープニングが予定されており、「ブラジル水着」が更なる国際的飛躍を遂げる舞台になるだろう。