僕が彼女についてわかっていることは、少し陰のある美人であること、色素が薄いこと、僕の落書きに興味を持ったこと、マイペースなこと、なぜか僕の名前を知っていることくらいだ。ううむ、これではどうしようもない。彼女が何を考えているのか分からない。僕はこの1週間で、あの落書きを「いい街」と言う彼女の持つ感覚を知りたい、理解したいと思うようになっていた。ただの落書きと1分程度の会話だと思うかも知れない。それは結構だ。でも、気にならない方がおかしいと思わないか? 気まぐれの落書きに共鳴してくれる人が、世界に何人いるだろう。それがしかも「変わった人」だったら、知りたいと思うのは当然のことだ、と言ったことを思いながらこの1週間、講義の前後に教室を見回したりしたものだが、彼女の姿は見当たらなかった。
「あら、久しぶりじゃない」
そしてあの日からちょうど1週間後、同じ講義の日、彼女はさも当然のような顔で隣に腰掛けた。茶色のセーターにジーンズ、今日も地味な格好だ。
「探しましたよ、この1週間」
「こっちもよ」
「僕は普通に講義に出てましたよ」
「しょうがないじゃない、学部違うんだから」
「は?」
「今日この後は空いてる? 5限の後なんて暇よね。会わせたい人がいるのよ」
意味がわからん。
「あら、久しぶりじゃない」
そしてあの日からちょうど1週間後、同じ講義の日、彼女はさも当然のような顔で隣に腰掛けた。茶色のセーターにジーンズ、今日も地味な格好だ。
「探しましたよ、この1週間」
「こっちもよ」
「僕は普通に講義に出てましたよ」
「しょうがないじゃない、学部違うんだから」
「は?」
「今日この後は空いてる? 5限の後なんて暇よね。会わせたい人がいるのよ」
意味がわからん。