「太輔!!」
ドアを開けて中に入ると
ただ静かだった。
太輔のお父さんは太輔が小さいときになくなった。
だからおばさんは太輔達のために毎日朝から夜まで働いていた。
「太輔!?」
中を探してみると奥からすすり泣く声がした。
太輔だった。
太輔が泣いているのを見るのはおじさんがなくなったとき以来だった。
太輔はいつもみんなの前では笑顔で、
つらいことがあっても表に出さない。
そんな太輔をわかってるはずなのに私はいつも太輔の力になれずにいた。
だから、今目の前にいる太輔を…
抱きしめてしまったんだ…
抱きしめた太輔はなぜか小さく感じた。
泣きながら震える太輔を私はただ抱きしめた。
強く強く。
どのくらい時間が経ったんだろう。
数十分だったのかもしれないでも、何時間も何日もこうやっていた気がした。
いつのまにか太輔の震えは止まっていて、泣き声も部屋には響いてなかった。
「美子。」
「…んっ。」
「ありがとな。」
「ううん。」
「俺さ、なんでこんな無力なんだろう…ここで泣いてても仕方ないのにな…俺さ母さんの顔見れなかった…。」
「…。」
「母さん高嗣が何回呼んでも起きないんだぜ…。いつもなら笑って返事するのにさ。俺逃げてしまったんだ…家に帰ってドア開けたら母さんいるんだって…
現実から逃げて…でもいなくてただいまっていっても返事なくてさ…」
「…うん。」
「俺なんも親孝行出来なくて、迷惑ばっかかけてなのにもういなくなってしまった。ありがとうって言えなかった…」
「太輔行くよっ」
私は太輔の手を掴んだ。
「えっ」
「おばさんに気持ち伝えなよっ!!」
「伝えるって…もう死んだんだぜ…」
「でも、言わなきゃ絶対後悔するよっ!!だから行くよっ!!」
「うん…。」
太輔と私は病院へ向かった。
手を握ったまま。
ねえ太輔!?
あのとき手を握ってたのは不安だったから!?寂しかったから!?
たとえそうだとしても
強く握ってくれたあの手は
握り返してくれたあの手は…
太輔…
