サブオーディオシステム1の2回目。
前回も書いたが、構成は次の通り。
○ CDプレーヤー デンオンDCD-S10
○ ネットワークプレーヤー マランツNA-6006
○ プリアンプ クリスキットMARK8D
○ パワーアンプ エレキットTU-8900
○ スピーカー ソナスファベール トイ・クラシコ
今回はアンプ、スピーカー編。購入順に書くことにする。
○ スピーカー ソナスファベール トイ・クラシコ
10年ほど前、ハードオフにいったところ、新品で売っているのを見つけた。帰宅してから気になってネットでリサーチしてみると、このスピーカーはソナスで一番安いものの、ソナスらしい音がするようだ。ソナスの音は行きつけの店で何度か耳にしていた。ソナスの音はレンジはそれほど広くないが艶やかな音で、かなり個性が強いけれど嫌いな音ではない。
定価は税別で168,000円。例のハードオフでは96,000円だったので、かなりお買い得である。
実は少し前にリビングで使っていた小型スピーカーを書斎に移してしまったため、リビング用の小型スピーカーがほしいと思っていたのである。(これについてはサブシステム2で書くつもり) 少し悩んだが、ソナスのスピーカーを使ってみたいという気持ちが強まり、購入することにした。
まず、マランツのネットワークレシーバーにつないで。エージングのつもりでしばらく音を出してみたが、想像したほどよい音ではなかった。こんなものかとも思ったが、その後バトラーというメーカーのVACUM18WⅡという真空管とトランジスタのハイブリッドアンプ(4万円で購入)を導入したところ、音像がはっきしセパレーションもよくなった。
次に、前から使っていたマランツPM-90にもつないでみたが、低域が増すとともによりメリハリのきいた音になった。だが、やや乾いたような音になり、このスピーカーの長所である艶やかさが消されてしまったような気がする。懇意にしていたオーディオ店主のKさんに訊くと、ソナスはかなりアンプを選ぶらしい。
2年くらいバトラーのアンプで鳴らしていたが、エヌモードが小型のパワーアンプを出していたことを思い出し、X-PW1を買ってみた。するとこれが当たりで、ぐっと瑞々しい音になり、しかも低音がしっかり出るようになった。欲が出て、X-PW1もう一つ購入してモノブロックにしたところ、音の鮮度が更に上がった。しばらくは書斎で瑞々しい音を奏でてくれた。
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現在はリビングのテレビの脇に置いてあります。天板に傷のようなものが見えますが、これは何と加水分解していたのを、そうとは気づかず擦ってできたもの。サイドは革で覆ってあるものの、天板は樹脂だったようです。ちょっとがっかり。
○ パワーアンプ エレキットTU-8900
3年ほど前、急に真空管アンプが欲しくなった。昔から興味はあったものの、積極的に使ってみたいとは思わなかったのだが、なぜか欲しいという気分が盛り上がってしまったのだ。
真空管に関する知識は(と言うかオーディオ機器全般の電気的な知識は)ほとんど無いのであるが、なんとなく「真空管アンプなら300Bシングルだ」という勝手な思い込みがあった。
そこで、300Bシングルアンプをネットで検索してみると、有名無名のメーカー、個人の自作アンプがたくさん出てくる。やはり300Bは人気があるのだろう。値段ももちろんピンキリである。
予算は限られているので、やはりトライオードあたりが無難かと思っていたのだが、ふと気になるものを見つけた。EKジャパン(旧エレキット)がキットではあるが、300Bと2A3を差し替えることができるパワーアンプを出していた。しかも300B、2A3を自動判別してくれるという。
ただ、残念なことに、私は電気工作など中3の技術の実習でやった以来、ハンダごてさえ手にしたことがないし、生来手先が不器用である。最近は老眼も進んできていて、とてもではないが自分で組み立てることなどできそうもない。
組み立てのサービスはないかと探っていくと、あった! サガミオーディオというところが組み立て完成品を販売していた。しかも300Bか2A3の真空管どちらかが付属するという。価格もそれほどではなく、2A3付属で165,000円ほどだった。(300Bだと5千円ほど高かった。今は値上がりしているようだ)これだ!ということになり、2A3のタマ(中国PSVANE社製)付きを注文、別にスロヴァキアのJJ社製300Bもアマゾンで注文した。
初めての管球アンプであったので他と比べることはできないが、イメージに近い音がして大いに満足した。レンジは狭く音もきめ細かくないのだが、何と表現したらよいのだろうか、人肌に寄り添うような実に親しみやすい音がする。「音」ではなく「音楽」を聴くという感じである。
しかも、ソナス・トイとの相性もよく、トイが嬉しそうに鳴っているように感じる。「音」より「音楽」を聴きたい私にとっては願ってもないことである。ただ、フルオーケストラやビッグバンドはやはりちょっときついようだが、私は元々クラシックであれば室内楽、ジャズであればコンボの演奏が好きなので、不満はなかった。また、ボーカルも男女問わず豊かに表現してくれる。
タマによる違いであるが、2A3は温かみがありほっこりと鳴るのに対し、300Bの方はやや引き締まっていてダイナミックである。頻繁にではないが、年に2~3回、差し替えて音色の違いを楽しんでいる。
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PSVANEの2A3を挿しています。これは一応パワーアンプなので、ボリュームは付いていますが、セレクターはなく入力は1系統です。増幅管は12au7ですが、12bh7aでもいいとのことで、こちらも試したいのですが、なかなか手に入りません。
○ プリアンプ クリスキットMARK8D
クリスキットという名前はかなり以前から知っていて、ネットでも随分見ていた。また、これも随分前になるが、このキットを開発した桝谷英哉(ますたにひでや)氏の書いた「オーディオマニアが頼りにする本」という本を読んでいたのだ。この本、何冊かに分かれているが、私が読んだのは「1」と「2」である。「1」の方は回路についてかなり専門的な内容に踏み込んでいて、私には半分も理解できなかったが、「2」の方は親しみやすく、オーディオというものがとてもよく理解できた。
ネットや本で桝谷氏から学んだことは、良い音は見た目や価格で決まるわけではなく、設計と使うパーツの品質によって決まるということであった。また、氏は自作のプリアンプ(つまりクリスキット)をつなぐだけで確実に音が良くなると力説していたのを覚えている。(桝谷氏は2000年に75歳で亡くなったそうだ)
というわけで、はるか昔からこのキットは気になっていたのだが、なにせ不器用な私に組み立てられる訳もなく、ずっと記憶の隅に追いやられていたのである。
ところが今年の6月、少し離れた市にあるハードオフで、組み立てられた中古品を発見したのだ。それも二つも! 一つはMARK8Universal、もう一つがこのMARK8Dであった。価格は前者が5万円、後者が4万円だった(どちらも税別)。両者の違いは、フォノ入力の有無だけで、私はフォノ入力は必要としないので、8Dでいい。しかも、8Dの方にはそれほど高級感はないもののサイドウッドが付いている。
即決できず、その時はそのまま帰宅したのだが、ネットで調べ直したり桝谷氏の本を読み直したりしているうちに、どうしても欲しくなった。そこで、数日後にその店に出向き、購入した。まだ売れていなくてよかった。
さて、帰宅してすぐにサブシステムにつなぎ、音を出してみた。するとどうだろう、音が激変したのだ。もちろんいい方に! 音に鮮度が増したというか、雑味がなくなったというか、本当に清らかな音になったのである。しかも、タマの良さを消してしまったわけでもない。やはり、桝谷氏の自信はまやかしではなく本物だったのである。
もう一つ、嬉しい誤算があった。ハードオフでの表示には、「ローブーストは切ってあります」とあったのだが、実際にスイッチを入れてみると低域が持ち上げられるのが分かる。実際は切れてはいなかったのだ。店員の耳が悪かったのか、それとも試聴環境が悪かったのか。「看板に偽りあり」であるが、こんな「偽り」なら大歓迎である。ローブーストスを入れた方が、トイのような小型スピーカーには効果的だ。私は常にこのスイッチをオンにして聴いている。
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写真はオークションサイトから借りました。今でも結構ファンが多いようですね。
以上がサブシステム1である。プリもパワーもアンプは期せずしてキットになったが、スピーカーとも相まって結構個性的な組み合わせになったと思う。NA6006のDACとDCD-S10のDACの切り替えや、真空管の差し替えなど音の違いを楽しむこともできる。今のところ、とてもお気入りのシステムになっている。