8月に福岡市博多区で開かれた時計修理技能セミナー=福岡時計職人の会提供
後継者不足などに悩む福岡県内の老舗時計店49店が結成した「福岡時計職人の会」に修理などの問い合わせが急増している。会のホームページで職人や店のこだわりを紹介したことで“街の時計屋さん”が見直されているようだ。会長の衛藤憲太郎さん(60)は「予想外の好スタート。以前は競い合っていたが、みんなで勝ち残っていきたい」と手応えを感じている。
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会は倒幕に向け薩摩藩と長州藩が手を組んだ薩長同盟の締結(1866年1月21日)にあやかって、ライバル店が協力しようと今年1月21日に結成された。県内には最盛期の1980~90年代に数百の時計店があったが、職人の高齢化やデパートや量販店の進出で廃業が相次ぎ、現在は数十店まで減少している。
福岡市・天神で店を創業し62年になる衛藤さんは「これ以上店を減らしたくない。消費者が安心して時計修理を任せられる環境を残したい」と奮起し、県新生活産業研究プロジェクト支援事業の助成を受けて会を設立した。ホームページ作成の他、若手職人向けの技能研修も開いている。
ホームページには、職人の顔写真がずらりと並び、クリックすると経歴や店の紹介につながる。▽社長自らスイスに出掛け時計工場視察や修理技術の習得をしています▽作業の様子をお客さんの目で確認していただくことができます▽1階から2階へと向かう壁面に並んだ掛け時計の数々は、まるで美術館のよう--などとアピール。「商店街ソフトボールチームでは80歳の今でもピッチャーとして活躍中」といったユニークな自己PRもあり、ブログでは年代物の時計を修理する様子などをつづっている。
会の事務局を置く県時計貴金属眼鏡商業協同組合には、これまで客からの問い合わせはほとんどなかった。しかし、会設立後は、修理依頼などが8月末までに約120件あり、各店にも少なくとも計約250件寄せられた。ホームページを見た人から「もう直らないと思っていた古い置き時計の修理を頼みたい」「自宅近くにこんな時計店があるとは知らなかった」といった声が寄せられているという。
衛藤さんは「ホームページで親しみや安心感を持ってもらえたのではないか。将来的には寺子屋のように若い時計職人を育成する仕組みを作りたい」と抱負を語る。老舗が新たな時を刻み始めた。
問い合わせは事務局092・271・1863。【川上珠実】
◇同業者グループで生き残りかけてスクラム
後継者不足で悩む物作りの世界では、同業者グループが生き残りをかけてスクラムを組む例が多い。福岡県大川市では昨年、伝統の大川家具の新たな販路を見いだそうと同業8社がインターネット通販のセレクトショップ「KINOMAMA(きのまま)」を開設。八女市では、伝統織物の久留米絣を身近に感じてもらおうと、筑後地域の絣工房が集まって久留米絣(がすり)のもんぺを集めた「もんぺ博覧会」が11年から開催されている。