「・・火星へ?」
「そう」
「松本くんと?」
「・・、まあ」
突然の申し出に、滝沢が凛々しい眉を僅かに寄せる。

「理由は?
知ってるとは思うけど、博士(きみ)達に研究目的以外の渡航の権限は、」
「研究のための人員確保。大野の助手として採用した松本が色々あって俺の助手になったから、新たな大野の助手が必要。それもなる早で。
前任者の知念という優秀なスタッフが、俺がもといた火星の病院で働いてるらしいから、直接行ってヘッドハントしてくるつもり。そもそも彼は俺のせいで辞めさせられたようなもんだし、全部俺の責任だ」
滝沢の台詞に被せるように捲し立てると

「色々あって、ねえ・・。
でも、それで何故松本くんの同行が必要なのかな?」
「あいつは何も知らない一般人なんだから、渡航に制限は無いだろ?」
「だが、」
渋る滝沢に耳を寄せて
「・・まだ誰にも言ってないが、どうやら彼は重度のホームシックらしいんだ。
まだ若いのに、こんな辺境の星に閉じ込められておっさんの相手ばっかしてたら、そりゃ人恋しくもなるだろ?可哀想だと思わない?」
「・・それは、」
「もしこのまま回復しないなら火星か地球に戻す事も考えないといけないだろう。
だから今回、火星に連れて行って興味のある施設を見学させてやろうかと思ってる。
まだ本人には内緒だけど」
「・・・」

あきらか松本を気に入ってる滝沢は、松本が困っているとアピールしたら強くは反論出来ないようだった。

こうして、ゴリ押しでどうにか火星への片道2人旅が実現した。



俺は焦っていた。

もうすこし、
あとすこしだけ
彼の作ったオムライスを食べたら
いま一緒に作っている野菜が収穫できたら
もっと潤の色んな表情を記憶できたら

そうやって日々を過ごすうちに、潤への気持ちはどんどん膨らんで
もう自分ではどうにも出来なくなっていた。


『翔さん、トマトが出来たよ!』
キラキラ瞳を輝かせて、俺に収穫したばかりのトマトを見せにくる潤。
白い肌と、真っ赤なトマトのコントラストが眩しくて
はたして俺に、この笑顔を手離せるのかと自問する。

少し前から、知念をStormに戻す事が出来たら後任として潤を火星の病院に推薦することを考えていた。
智くんのためにも早く行動しなくてはいけない
だけどその時期をずるずる引き延ばしている自分がいる。

早く潤を解放してやりたいのに
そう約束したのに
Uberが撮り溜めた潤の映像は、そのどれもが鮮明に記憶に焼き付けられて、次々と溜まっていく
なのに全く満足できない自分がいた

もっと潤を見ていたい
色んな潤を知りたい
触れたい、キスしたい
ずっとそばにいてほしいーーー

欲望には際限がなく
こんな感情は初めてで、どうしていいかわからない
自分の気持ちが矛盾ばかりで苦しくて

このまま彼をここに置いておくことのリスクは誰よりも承知している
この状況を誰よりも理解しているのは俺なのに

それなら思い切って潤との時間をまとめて取り、一生分の潤を記憶することで無理矢理自分を諦めさせられないかと
一緒に火星へ連れて行くことを思いついた。

だけど、それは建前で
もしかしたら、最後にただ彼と2人きりで過ごしたかっただけなのかもしれない。


嵐さん、デビュー26周年おめでとうございます💚💜💛💙❤️
17時からの生配信、楽しみにしています✨