吹奏楽経験者向け金管バンドで演奏する上で最も大切な3つの事
多くの人が部活動で吹奏楽をはじめそこで楽器を始めたと思います。
その後社会人になり金管バンドに出会い熱中するのですが
吹奏楽と金管バンドの違いに悩まされます。
- 金管楽器しかないから
- 曲が難しいから
- 人数が少ないから
と言いやすいですが、逆に簡単な曲で、人数が多ければ金管バンドになるのでしょうか?
どうやらそうではなさそうです。
長年奏者や指揮者をしてきて感じた我々が簡単にできる改善点をご紹介
- 音の長さはどのくらい?
- 小さい音量での演奏
- ヴィブラート
- 絶対になれないものになろうとしない
説明していきます。
1、音の長さはどれくらい?
どうしてか、吹奏楽に慣れ親しんだ我々は金管バンドの楽譜を吹くと
音価
つまり音の長さをあやふやに演奏しがちです。
とりわけ吹き終わり、つまりフレーズの間や終着点の音です。
出だしがバラバラになるのはとても分かりやすいので修正をし易いのですが、
音楽のつなぎ目や終着点の音価をすごく短く=長さをあやふやに演奏し易いようです。
例えばCantabury Chorale/J. van der Roostのこの部分
Aの4小節目三拍目の四分音符 or 付点二分音符はフレーズの終わり目
そして次のT.HornとEuphにフレーズは受け継がれます、ですがこの四分音符または他パートの付点二分音符の長さが
- 長すぎると次の旋律を邪魔し
- 短すぎるとフレーズが途切れる
吹奏楽では様々な種類の楽器が使用されるためフレーズ終わりの音価を少し長めに演奏する技術というのもありますが、金管バンドにおいては”譜面通り”というのは基本鉄則です。例外的に
- 作編曲者の書き方が不自然
- スタイルを出すためあえて
を行うことはありますが、本当に例外的です。
音価を変えて(この場合は短く)演奏することは極論で言うと編曲ともなってしまいますので特にフレーズ跨ぎや終わりはぜひ音の長さもこだわって演奏を行いましょう。
2、小さい音量での演奏
英国バンドのライヴ録音や来日したバンドの演奏、そんな生に近い演奏を聴いたことがある方ならご存知でしょうが
金管バンドのp、つまり弱奏はとても小さいです。
オーケストラの本気のpと同程度、またはそれよりも小さく演奏する故あの独特の緊張感が生まれます。
金管バンドの多くの素晴らしい指揮者や奏者がおっしゃっているのが
「コンテストで勝つのは最も大きい音が出るバンドではない
それは最も小さい音を演奏したバンドである」
極論に近い意見ですが、それほど金管バンドにおけるp, pp, pppというのはかなり小さいです。
吹奏楽における我々金管楽器の役割は
- 音量の増量
- ソロの演奏
- 音色を変える
- ファンファーレのような力強い場面での演奏
と本当にアバウトに大きく分けるとこのようなものでしょう。なのでpと書いてあっても金管バンド的にはmfぐらいで演奏しても全く問題が無いことが多いです。
しかし金管バンドのpは本当のpです。
ささやき声のような、冷たい風が通り抜けているような張り詰めた雰囲気の中ただただtuttiで弱奏を演奏します。
元来、信号を伝える役割として発明された金管楽器なので大音量は得意です。
しかし金管バンドはそのたった約28名でどのような音楽も表現しなくてはなりません。
- ミュートを使う
- 楽器編成を変える
- バランスを変える
- バンド内で用いる楽器を変える(トロンボーンと2nd,3rd corなど)
- ヴィブラートを変える
- 音量を変える
- Articulationを使う(アーティキレーション=表現記号)
など同属の楽器ばかりゆえ先人たちの知恵でこのような表現方法が生まれてきています。
しかしヴィブラートと音量、表現記号に関しては吹奏楽とは全く違うアプローチをしないと効果がでません。
表現の仕方にぜひより大きく、小さな音量も取り入れ表現の幅を広げましょう。
3、ヴィブラート
吹奏楽においては美しいハーモニーや大音量でのメロディ演奏などが金管楽器の活躍の場ですのであまりヴィブラートは求められません。たまに出てくるソロで行うぐらいでしょう。
しかし金管バンドでは先述した通り同属楽器ばかりゆえ表現の仕方に制約が多いです。
木管楽器や弦楽器、歌などをいれて音色や曲想を変えるのは容易なことですが、同じ楽器のみを使ってそれらを変えるには音量、表現記号の他に
ヴィブラートはなくてはならない存在です。
しかも、なぜこのヴィブラートの文化がいまだに定着していないかというと
・専用の練習が必要
だからです。
ロングトーンやタンギングの練習をしていれば次第に音の大きさやレンジの幅、リップスラーができるようになってくることはありますがヴィブラートに関してはは一向に上達しません。
本当にシンプルな話です。
練習するか、しないか
それだけで表現の幅が格段にあがります。
またヴィブラートも
どのように「かけるか」がとても重要になってきます。
それに関しては様々な時代の音楽を聴き自分が表現したい音楽をヴィブラートを使うことによって表現できるように研究してみましょう。
例えば、弦楽器と歌のヴィブラートのかけ方は違いますしポップスも大きく違います。
賛美歌とロックの時のかけ方など天と地ほどの差です。
一点だけ要注意なのは全ての音にかければ良いと言うわけではありません。
様々な偉大な音楽家が残した資料を聞いて自分の好みを探しましょう。
練習法の1つは先日収録しました。以下から
4、絶対になれないものになろうとしない
多くの人が「英国の金管バンドのような音!」というものに憧れ練習に励みます。
僕もそうでした、でもそこばかりに着目してしまうと極論
「福山雅治素敵!僕もあのような人になりたい、努力しよう!あれ姿形も違う、なれない、なんでだ、自分が悪いのかな・・・・」
となります。
自分以外の人になることはできません。
ですので河野の意見は「日本の金管バンドのサウンドや音楽作りを極めるべき!」です。
アメリカのプロバンドに「Rivercity brass band」というのがあります。
彼らも金管バンドです、しかしオーケストラで使われるような金管楽器も使います。
指揮者は本場英国スコットランドの英雄J.ガーレイです。
そんな彼らは僕らから言わせたらAmerican brass bandでしょう。
でも僕らもそうです、
Japanese brass bandです。英国様式に則っているだけです。
僕らは
- イギリス人になれない
- イギリスに住んでいない
- コンテストがない
- 楽器を始めた経緯がイギリス人の大半と違う
という風に違う箇所ばかりです。
なので僕も憧れてはいますが、日本人としての僕の良さを成長させて挑んでいきたいと思っています。
英国人と比べる必要はなく、敬意の上参考にし僕ら日本の金管バンドの音や音楽を作っていくべきです。
まとめ
最後になりますが、
ほんの些細なきっかけでバンドの音楽ががらっと変わります。
しかし、逆に小さな事でもったいない時間を作ることにもなります。
ぜひ
- 音価
- 音量
- ヴィブラート
- Japanese Brass Band
チャレンジして日々のバンド活動に活かしてみてください。
それでは今日も良いBandingを